安倍晋三首相は9月21日、米ニューヨークで、金融関係者らを前に講演を行った。その中で「日本はこの3年間で生産年齢人口が300万人減少したが、名目GDPは成長した」とし、「日本の人口動態にまったく懸念を持っていない」と述べたという。
生産年齢人口が減少したのに経済が成長したということは、労働力の絶対数の減少を生産性の上昇によって克服したことを示している。それが正しければ、確かに「人口動態恐るるに足らず」という気持ちになっても不思議ではない。講演を聞いている人たちもそんな気になったかもしれない。
揚げ足を取るつもりはないが、生産年齢人口と経済成長の関係について考えてみるちょうどよい機会であるので、少し丁寧に吟味してみよう。
2015年の日本の生産年齢人口は、12年に比べて325万人減少している。したがって、安倍首相の言う「この3年間」というのは、12年から15年までの変化だと考えられる。
確かにこの期間を取ると、生産年齢人口は4.1%減少したのに、名目GDPは5.0%増えている。生産年齢人口当たりの生産性は9.1%上昇したことになる。生産年齢人口減少の影響を生産性の上昇で十分補って力強い成長を実現したという議論は正しいように見える。
しかし、次のような点に注意する必要がある。一つは、物価の上昇だ。名目GDPの成長率は、実質GDP成長率とGDPデフレーター(物価)上昇率に分けられる。この3年間の実質GDPの成長率は1.9%、デフレーターの上昇率は3.2%だった。すると、名目GDP成長率の半分以上は物価上昇によって実現したことになる。
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