iPhone7が発売されて、その話題でちまたは盛り上がっている。しかしながら、報道がスマートフォンのハードウエアに偏りすぎるのは問題である。米アップルの恐るべき戦略を直視しておかないと、経済を見る目が曇りかねない。
去る9月7日にアップルが主催した新製品発表会の最大の目玉は、行政サービスが行き届かない米国の114校をアップルが支援するという発表であった。何と教師4500人と生徒5万人にiPadを無償で配るというのである。教師にはMacも配り、全教室にアップルTVまで据え付けるというから、何をたくらんでいるのかと勘繰りたくなる。
CEOのティム・クックは、これを格差解消に向けた一手と位置づけた。機会均等の理念が守るべき最後の砦は義務教育で、そこに格差が生まれる事態は許されない。ところが、昨今は裕福な学校から競うようにしてiPadを教室に導入している。機会を不均等にする流れに図らずも加担する現実に心を痛め、クックは自分たちに何ができるのか自問したという。
彼の真意を示唆するのが、学童に配るiPadに搭載されたプレイグラウンドというアプリである。アップルはスイフトという新たなプログラミング言語を2014年に開発しており、今年6月の開発者会議で、スイフト用のプレイグラウンドを公開した。これは、iPad上で学童でもスイフトによるプログラミングに挑戦できる直感的なデバッギング環境にほかならない。
一貫してぶれない取り組みは、それだけで戦略と呼ぶにふさわしい。私見になるが、造船工の家に生まれたクックはブルーカラーの職が減っていく傾向を憂いているに違いない。教育に入れ込むのは、安定した収入が約束される職に就けないかもしれない学童に、プログラムを書いて生計を立てる道を用意したいからなのであろう。
この記事は有料会員限定です
残り 710文字
