6月に導入されたコーポレートガバナンス・コード。上場企業は取締役会に2人以上の社外取締役を置くことが求められる。となると当然、経営学者にも白羽の矢が立つ。
実際に社外取締役を務める経営学者は多い。図表1では3社以上の社外取締役を兼務する主な経営学者を挙げた。昨年、企業に対し最低でも8%以上のROE(自己資本利益率)を求める経済産業省の通称「伊藤レポート」をまとめた一橋大学の伊藤邦雄教授、同じく一橋大学で、大手コンサルのマッキンゼー・アンド・カンパニーから転じた安田隆二教授は、5社の社外取締役を兼務している。
拡大する
体のいいアドバイザー
ただ、社外取締役を務めるある経営学者は「社外取締役といっても何の権限もない」と自嘲ぎみに語る。2人以上置くといっても、ほとんどの場合、取締役会の少数派でしかない。指名委員会のトップにでもならないかぎり、人事権もない。「経営者の戦略を追認する体のいいアドバイザー」(同)となるリスクはつねにある。
5月には建築用免震ゴムの性能偽装事件に揺れる東洋ゴム工業で、金井壽宏・神戸大学大学院経営学研究科教授が社外取締役を退任した。その理由は不明だが、金井教授はリーダーシップ論の第一人者として知られるだけに、株主からすれば期待外れの結果だっただろう。
今後は経営学者に対する期待とともに、その責任も高まりそうだ。
入山先生が教える 経営学の新定説3
ダイバーシティ
「デモグラフィー型」は逆効果
ビジネス界で注目される「ダイバーシティ経営」。しかし、その本質を理解せずやみくもに人材の多様化を進めることには、リスクも大きい。
近年の経営学では、ダイバーシティ(多様性)に2種類あることがわかっている。1つは「タスク型の多様性」。能力・職歴・経験などについて、多様な人材を組織に取り込むことをいう。もう1つは「デモグラフィー型の多様性」。性別・国籍・年齢といった「目に見える」属性の多様化だ。日本でダイバーシティというと後者、中でも女性・外国人登用のイメージが強いのではないか。
2つの多様化に大きな違い
この2種類のダイバーシティが組織に与える影響については、経営学で実証研究が積み重ねられてきた。そして多くの研究から、「タスク型の多様性は組織にプラスの影響を与える」という結果が得られている。さまざまな職歴・経験・能力を持った人が集まれば、組織の「知が多様化」し、イノベーションに結び付く。
一方で、デモグラフィー型の多様性は「組織に何の影響も与えないか、むしろマイナスの影響を及ぼしかねない」。組織のメンバーに性別・人種など、目に見える違いがあると、「自分と同じ属性のメンバー」と「それ以外」を分類する心理作用が働き、いつの間にか「男性vs.女性」「日本人vs.外国人」といった軋轢が生まれ、組織のパフォーマンスを停滞させてしまう。
何も女性や外国人を登用するなということではない。企業は業績を高めるために人材を多様化する。ならば、まず考えるべきは、タスク型のダイバーシティだ。
女性や外国人を登用する際は、その人がどのような経験・知見を持ち、それが組織の知の多様化にどう結び付くかを検討すべきだ。そして研修を徹底するなどして、デモグラフィー型のダイバーシティの負の効果を取り除く必要がある。表面上の多様化だけを進めても、成功は望めないのだ。
この記事は有料会員限定です
残り 590文字

