平時の安保論議はこの国では珍しい。イラク戦争が始まったとか、テポドンが飛んだとか、いつも尻に火がついてから泥縄で法案を通す。だから議論は深まらず、国民の理解も進まない。今まではその繰り返しであった。
それが今回は、戦後の安保政策を転換する大型法案を堂々と審議中だ。しかも「締め切り」がない。仮に新安保法制案が継続審議になったところで、すぐに困るわけではない。腰を落ち着けて論議を深める好機であろう。
世論調査を見るかぎり、新安保法制案への国民の支持は低い。ところがそれを推進している安倍内閣の支持率は相変わらず高いままである。
おそらく、国会会期末となるであろう8月上旬には、与党が法案を強行採決するのだろう。さすがに支持率が下がるけれども、時間を置くとまた元に戻るのではないだろうか。特定秘密保護法と同様のパターンである。
非現実的な日本の左派
与党の国会対応は、お世辞にも上手とはいえない。自ら野次を飛ばす首相の勇み足、防衛相の不安定な答弁など攻めどころが多い。ところが「敵失待ち」の野党戦術のせいか、論議が一向に盛り上がらない。筆者は新安保法制案を是とする立場だが、左派陣営に歯がゆさを感じている。
遺憾ながら、左派にはリアルな安保論議のできる論客が見当たらない。反対の識者というと、ほとんどが憲法学者だ。たとえば、岩波書店『世界』6月号の特集「安保法制と『戦後』の変質」を見ても、その問題意識はもっぱら「法制」にあって、「安保」にはない。中国の海洋進出や北朝鮮の核開発への分析はまったくといっていいほど出てこない。
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