「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが
オミクロン株で感染が急速に広がったアメリカでは、できるだけ早期に3回目の接種を受けるべき、というのが専門家のコンセンサスになっている。とはいえ、追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている。さらに、抗体濃度がピークにあるときでさえ、3回目の接種ではオミクロン株に対し感染を一様に予防できるほどの効果は引き出せない。
オミクロン株、あるいは今後出てくる新たな変異株に対して免疫を引き上げることを目的とするのなら、最初に感染が広がったウイルス株に合わせて開発されたワクチンを繰り返し接種するのではなく、ほかの戦略を用いた方がよいというのが専門家の見解だ。
一部では「汎コロナウイルスワクチン」の開発も進められている。変異が極めて遅いか、まったく変異を起こさないウイルス部位を標的とするワクチンだ。
現行ワクチンを打った人々に、ブースターとして経鼻または経口ワクチンを用いることも考えられる。経鼻・経口ワクチンはウイルスの侵入経路となっている鼻腔などの粘膜表面に抗体をつくり出すため、感染予防にはより適している。
さらに、ワクチン接種の間隔を広げるだけで、免疫が強まる可能性もある。これは、新型コロナ以外の病原体に対する戦いで得られた科学的知見だ。
感染を完全に防ぐのは無理
ニューヨークのロックフェラー大学で免疫学を研究するミシェル・ヌッセンツヴァイク氏は、「ワクチン接種は入院率の抑制に極めて高い効果を発揮している」とした上で、感染を完全に防ぐのは無理だということがオミクロン株によってはっきりしたと話す。
ワクチンで感染の拡大を防げるのなら、定期的なブースター接種には合理性があるかもしれない。「しかしオミクロン株(がこれだけ感染を広げている現状)を踏まえると、(感染防止目的のブースター接種には)意味がない」とヌッセンツヴァイク氏は語る。「目指すべきは、入院を防ぐことだ」。
アメリカでパンデミック関連の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏も、本当に重要なのは入院を減らすことだと述べている。
ブースター接種で感染を防ぐには、実施のタイミングを変異株の流行にぴったりと合わせ込む必要がある。例えば、昨年秋に3回目の接種を済ませた人は多いが、オミクロン株が流行し始めたころには免疫のブースト効果がすでに低下し、感染しやすい状況になっていた。