武田真治は孤独な日々を言葉と筋トレで支えた 栄華を極めどん底を経た彼が楽しんでいる人生

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「はじめてちゃんと筋トレのことを書いた1冊目の本の縁もあって、『筋肉体操』のお仕事をいただけたのかな。その年の大晦日のNHK紅白歌合戦もご覧いただけました? タンクトップと短パンで天童よしみさんのステージにお邪魔して。笑いましたよね? 武田真治、何やってんだ!?って。不死鳥を見るようだったでしょ。性懲りもなく、また羽で飛ぼうとしてるのかって(笑)。でもあれこそ僕が“歩み”で得ることができたご褒美のような時間だったんだと思います」

その1冊目から7年、41歳だった武田は48歳になった。

「ありがたいことに、肉体も精神も7年間右肩上がりです。時流ということで言うなら、今は挫折を知っていることが、決してマイナスのプロフィールじゃなくなっている時代なのかなと。そういう時代性あっての、今回の2冊目です。まさか、自分が発する言葉なんかに耳を傾けてくれる人がいるだなんて。ただ無性に書き殴っていた20年前からすれば、考えられません。ありがたいことです」

「ひとりが楽しい」と思えてはじめて、大切な人に出会える

(撮影:塚本 弦汰)

著書には、「僕が出会っている既婚者たちには、結婚で強くなっている人が多い」とある。武田自身も昨年結婚した。

「結婚まで時間がかかったけれど良かったなと思うのは、僕と生活することを楽しんでくれる人に出会えたということです」

あえて聞いてみた。でも、出会いたいけど出会えない人もいますよねと。武田は時間をかけて質問を咀嚼し、丁寧に言葉を紡いだ。

「コロナで出会う機会自体が減っていることもあるから、大変な悩みだと思うんですよね。でも、なんて言ってあげたらいいんだろう。あの、一緒にいたいなと思う人って、絶対に“楽しそうな人”のはずなんですよ。もし今、ひとりの時間をどん底で暗いものだと考えているなら、出会いはまだ先かもしれない。むしろ『ひとりが楽しいぞ』って思えたときにこそ、『楽しそうだな。仲間に入れて』って人が目の前に現れる。人に何かを与えられる状況になってはじめて、その人と時間と空間が共有できるのかなって思います」

『上には上がいる。中には自分しかいない。』(幻冬舎)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

「誰かと出会いさえすれば楽しくなる」は、順番が違う。それが武田の考えだ。

「ゴルゴ松本さんの“吐”って漢字の話、知ってます? これ、いつも自分のことのように話しちゃうんですけどね(笑)。“吐(は)く”から“マイナス(−)”のことを言わなくなったら、 “叶(かな)う”ですよね。誰かと出会ってパートナーシップを組みたいんだったら、自分自身がプラスのオーラに包まれてなきゃいけないのかもしれないなって」

著書の本文、最後の一行はこう結ばれている。

「この人生を楽しんでいます」

(後編に続く、12月9日配信予定)

稲田 豊史 編集者・ライター

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いなだ とよし / Toyoshi Inada

1974年、愛知県生まれ。ライター、コラムニスト、編集者。横浜国立大学経済学部卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)に入社。その後、キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立。著書に『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)などがある。

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