台湾外交部や台湾保健当局の関係者によると、NGOや日米欧など関係が深い政府を通じてWHOのコロナウイルス関連情報を入手しているという。また、「水面下でWHOから情報が送ってもらえる」(台湾保健当局関係者)こともあり、WHOも「必要に応じて技術的な支援を台湾にしている」とコメントしている。
ただ、WHO非加盟のため、「必要な情報を必要なときにいつでもアクセスできる保証はない」(台湾外交部幹部)という状態であり続けている。
国際社会で相次ぐWHO批判の声
台湾側は2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際、WHOから診断方法などの重要情報を得られず、SARS封じ込めに苦しんだ経験がある。最終的にWHOが職員を台湾に派遣したが、感染が確認された346人のうち、2割超に相当する73人が死亡(うちSARSが直接的死因と確認されたのは37人)。感染疑い例を含めると死者は180人に達し、SARSの終息は世界でもっとも遅かった。
WHOとICAOが台湾を排除していることについて、国際社会からは批判の声が相次いでいる。アメリカ下院外交委員会はツイッターで「台湾排除に反対する声を封じるのはICAOが掲げる公平、包摂、透明の原則に反する」と表明。カナダのトルドー首相は1月29日、「台湾がWHOの会議にオブザーバーとして参加することは国際衛生上、最大の利益をもたらす」と議会で答弁した。1月30日にはEUも台湾のWHO参加を支持する立場を示した。
日本の安倍晋三首相も1月30日の参議院予算委員会で、「政治的な立場で、この地域を排除するということを行うと感染防止は難しい」と発言。日本は1972年に日中国交正常化に伴い、台湾と断交しているが、国交がない台湾に言及した。
ただ、台湾のWHO加盟にとって最大の障壁となる中国の姿勢は強硬なままだ。中国外交部報道官は「台湾地区に情報を適宜、提供している」と反発。今回の新型肺炎をめぐって、台湾の検疫を中国が代表して責任を持つとの立場で、「中国中央政府ほど台湾同胞の健康に関心を寄せているところはない」(外交部報道官)と述べている。
中国政府は、台湾が自国の一部であるとする「一つの中国」原則を堅持しているが、中国側からは冷淡な対応が続いている。台湾政府は1月27日、中国に滞在している台湾人が台湾に帰るためのチャーター機を派遣したいと中国側に要請したが、回答がなかったと現地メディアは報じた。
対中融和路線の馬英九政権だった2009~2016年は台湾もWHOの年次総会にオブザーバー参加していた。ただ、台湾独立志向の蔡英文政権が発足した後の2017年からは総会に招待されなくなっている。
1月11日の総統選挙で蔡英文総統の再選が決まった。独立志向が続く台湾が国際会議に参加して存在感が高まることを中国は警戒している。新型コロナウイルスの感染拡大が続いても、中国政府は国際機関から台湾を排除するよう、圧力をかけ続けるとみられる。
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