ダイソー矢野博丈氏「親に見せたかった」 | 愚直に続けたから 成功した、ワケじゃない

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ダイソー矢野博丈氏<br />「親に見せたかった」

ダイソー矢野博丈氏
「親に見せたかった」

EOY2018日本大会
レポート

 

EOY2018日本大会
レポート

ダイソー矢野博丈氏「親に見せたかった」
「百均」創業者が、今年の起業家日本代表に

アントレプレナーを表彰するEYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(以下、EOY Japan)。この賞は米大手会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングの日本拠点であるEY Japanが主催するもので、これまでも多くの著名なアントレプレナーたちを輩出してきた。日本代表に選出されたアントレプレナーはモナコで行われる世界大会に出場し、各国代表と世界一を競い合うことになる。今回の日本代表には、「百均」の生みの親であり、大創産業の創業者、矢野博丈氏が選ばれた。

日本から世界ナンバーワンの
アントレプレナーを選出したい

2018年12月4日、都内のホテルにてEOY 2018 Japanの授賞式が開催された。EOYは、元をたどれば1986年に米国で創設されたもので、新たな事業領域に挑戦するアントレプレナーの功績や、その事業を通じて経済や社会にもたらした貢献をたたえる国際的な表彰プログラムだ。

01年からはモナコ公国モンテカルロで世界大会が開催されるようになり、各国の審査を勝ち抜いた起業家たちが国の代表として集結。“世界一の起業家”を目指して争うこのイベントは、英BBCや米CNNなど、海外主要メディアで毎回取り上げられるほど注目度が高い。

日本では01年から開催され、今回で18回目となる。著しい成長を遂げた、あるいは成長途上で、今後さらなる成長が期待されるアントレプレナーが対象の「エクセプショナル・グロース部門」、そして、業界や市場を代表し、影響力を有するアントレプレナーが対象の「マスター・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー部門」の各大賞受賞者の中から、モナコの世界大会に参加するEOY日本代表が選出される。

審査委員には委員長の出井伸之クオンタムリープ代表、EOY 2016日本代表である高岡本州エアウィーヴ会長兼社長、谷本有香フォーブスジャパン副編集長、藤森義明CVCキャピタルパートナーズ日本法人 最高顧問、渡辺洋行B Dash Ventures代表、福本拓也経済産業省経済産業政策局産業資金課長、西澤昭夫日本ベンチャー学会会長らが務めた。出井氏はこう抱負を語った。

「そろそろ日本から世界ナンバーワンのアントレプレナーを出したい。日本は失敗を許さない風土があるが、そもそもベンチャー企業はアドベンチャーだ。もっと冒険をしてほしい。今年も有力なアントレプレナーをモナコ大会に向けて選出したい」

さまざまなプログラムが開催され、
多くのアントレプレナーが交流

今回は授賞式に先立って、12月3、4日の両日にEOY Growth Forum 2018として、急成長中のスタートアップ、ベンチャー企業などのアントレプレナーによるプレゼンテーションやベンチャーキャピタリストらによるディスカッションなど多くのプログラムが開催された。

基調講演を行ったDrone Fund創業者・代表パートナーの千葉功太郎氏(左・初日)と、アリババジャパンCEOの香山誠氏(右・2日目)

会場ではコンテストやディスカッションなどさまざまなプログラムが行われたが、その中からいくつか紹介しよう。全国から選出されたスタートアップ・アントレプレナーによるコンテストEOY Japan Startup Awardでは、8人のアントレプレナーによるピッチコンテストが行われ、その場で審査・表彰がなされた。特別賞に選ばれたのは、スペースバルーン事業を手がける岩谷技研代表の岩谷圭介氏。「今、さまざまな企業と研究開発を行っているところで、2022年までに人を宇宙空間に届ける技術を身に付けたい」と豊富を語った。

優勝したのは農業法人D&Tファーム代表の田中哲也氏。「バナナの生産を手がけているが、5年後には日本で消費される全量の100万トンのメドを立てたい。すでに苗の供給は形が見えている」と力を込めた。

EOY Japan Startup Award 2018の審査員と参加者。左から、日本ベンチャー学会理事・金井一賴氏(審査員)、Looop代表取締役社長CEO・中村創一郎氏(審査員)、スカイディスク代表取締役・橋本司氏、山翠舎代表取締役社長・山上浩明氏、オプティマインド代表取締役社長・松下健氏、岩谷技研代表取締役・岩谷圭介氏、D&Tファーム代表取締役・田中哲也氏、YOLO JAPAN代表取締役・加地太祐氏、ランドスキップ代表取締役・下村一樹氏、Hacobu代表取締役社長CEO・佐々木太郎氏、インスパイア取締役副社長・見満周宜氏(審査員)、内閣府政策統括官付企画官・石井芳明氏(審査員)

またイノベーションにあふれた女性起業家を表彰するEY Winning Womenでは、在宅医療と女性活躍を同時に解決するクラウドクリニック代表の川島史子氏、越境ECの支援を行うアジアンブリッジ代表の阪根嘉苗氏らが選ばれた。

EY Wininng Women 2018のファイナリストと審査員。前列左から、アジアンブリッジ代表取締役・阪根嘉苗氏、よつばメンテナンス代表取締役・黒須貴子氏、タイガーモブ代表取締役・菊地恵理子氏、コグニティ代表取締役・河野理愛氏、クラウドクリニック代表取締役・川島史子氏

ベンチャー企業は
自分を信じることが大事

さらに前年度のEOY日本代表受賞者とJ-Startup企業によるトークセッションでは、東洋経済オンライン編集長の武政秀明氏をモデレーターに、EOY 2017日本代表であるTKP代表の河野貴輝氏らが語り合った。Spiber取締役兼執行役の菅原潤一氏は「ベンチャーは自分を信じることが重要。シリコンバレーで注目を集める起業家も、われわれと同じように壁にぶつかり、闘っている。隣の芝生は青く見えるが、そんなことはない」と言う。他方、トリプル・ダブリュー・ジャパン日本支社長の小林正典氏は「まずは世界に出てみることが大事。まだ7割しかできていなくても、まずは出て、そこから100%に持っていけばいい。日本は世界に通用しないという思い込みがあるが、そんなことはない」と語る。河野氏は「新たなサービスはお客様がいて、初めて形になる。イノベーションは魔法ではない。イノベーションはわれわれが快適に過ごすためにあるもので、今の延長線上にある」と未来のアントレプレナーたちにエールを送った。

「J-StartupからEY World Entrepreneur Of The Yearへ」のトークセッション。左から、東洋経済オンライン編集長・武政秀明氏、トリプル・ダブリュー・ジャパン取締役日本支社長・小林正典氏、Spiber取締役兼執行役・菅原潤一氏、TKP代表取締役社長・河野貴輝氏

新しいビジネスを生み出した
アントレプレナーたちを表彰

続く12月4日、とうとう夕刻から本番の授賞式が始まった。多くの関係者から注目が集まる中、紹介されたのは以下のファイナリスト14名。

マスター・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー部門
ファイナリスト 3名
栗田貴也 トリドールホールディングス社長
齋藤寛 シャトレーゼホールティングス会長
矢野博丈 大創産業創業者
エクセプショナル・グロース部門
ファイナリスト 11名
岡村恒一 オカムラ食品工業代表(東北地区代表)
木村隆夫 木村情報技術代表(九州地区代表)
重道泰造 アイグラン代表(中国地区代表)
白石徳生 ベネフィット・ワン社長(関東地区代表)
土橋秀位 クロスフォー社長(甲信越地区代表)
名越達彦 パネイル社長(関東地区代表)
樋口龍 GAテクノロジーズ社長(関東地区代表)
藤田哲也 カンディハウス社長(北海道地区代表)
松浦信男 万協製薬社長(東海北陸地区代表)
山本富造 山本化学工業社長CEO(関西地区代表)
吉松徹郎 アイスタイル社長兼CEO(関東地区代表)

張り詰めた緊張感の中、エクセプショナル・グロース部門大賞に選ばれたのは白石徳生ベネフィット・ワン社長。「今後は世界中の人々がサービスを比較検討して、安心してサービスを買えるようにしたい。ピンチはチャンス。困難な状況を前向きに捉えることが大事」と、若い起業家にエールを送った。

審査員特別賞に選ばれたのは、名越達彦パネイル社長と吉松徹郎アイスタイル社長兼CEO。名越社長は「イノベーションで社会を変えて、笑顔を増やしたい。技術には人を幸せにする力がありますから。自分につねに問いかけていることは、『あんたができることは誰でもできる』ということ。個の力ではなく、皆の力を借りることが大事」、吉松社長は「アントレプレナーとして、事業を通して社会を変えていきたい。もっと社会をよくするために、尽力していきたい。ゼロをプラスに変えていきたい」と、起業家としての決意を新たにしていた。

そして、今年のEOY日本代表に選ばれたのは、矢野博丈大創産業創業者。大創産業は国内約3300店舗、海外27カ国に約2000店舗の100円ショップ「DAISO」を運営。毎月800アイテムの新商品を開発し、その99%がプライベートブランド。そのユニークなビジネスモデルが評価された。

前列左から、名越達彦氏、白石徳生氏、矢野博丈氏、吉松徹郎氏、後列左から、岡村恒一氏、木村隆夫氏、重道泰造氏、土橋秀位氏、樋口龍氏、藤田哲也氏、松浦信男氏、山本富造氏、栗田貴也氏、齋藤寛氏

「私は41歳まで出来が悪かった。この受賞を大変うれしく思う。亡くなった親に今の自分の姿を見せてあげたいくらいだ。私はこれまで夜逃げもし、食うためだけに一生懸命働いた。自殺しようと思ったこともある。ずっと運命の女神を憎んできたが、儲けることを諦めてから売れるようになった。チリも積もれば山となる。若い人には運をよくする勉強をしてほしいと思う」と涙ながらに語った。

審査委員長の出井氏は、矢野氏を「原価率にとらわれないという、ものに対する価値の見方に独自性がある」と手放しで評価し、こう続ける。

「この時代の中で100円ショップをはやらせ、新しいビジネスモデルを確立されたことがすばらしく、今後のビジネスは、まず考え方を変えていかないと生き残れないということを証明したいい例です」

また、昨年のEOY受賞者であるTKP社長の河野貴輝氏は次のようにエールを送る。

「昨年、この場でエアウィーヴの高岡会長から日本国旗のバトンを受け取ったことを鮮明に覚えている。モナコの世界大会に向けて、自らの人生を振り返った。大会では自分個人のストーリーを語ることになった。EOYは情熱を吐き出せる場所。私は世界ナンバーワンにはなれなかったが、矢野会長にはぜひ世界ナンバーワンを目指してほしい。言葉の壁は厚いが、気後れする必要はない。絶対に私たちは負けていない。世界で羽ばたいてほしい」

2019年6月に開かれるモナコのEOY世界大会では、「よりよい社会」を構築するために、アントレプレナーとしてどのような思いで、また事業を通じて何をしてきたかが問われる。今後、日本のアントレプレナーはこうした世界の要請にどのように応えていくのか。矢野氏のモナコでの奮闘にぜひ期待したい。