JDI新社長が語る「脱スマホ依存」の行く末 経営再建のカギは中国向け車載パネルの育成

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JDIが非モバイル分野で力を入れる車載向けパネル。フル生産が続いており、2017年度の車載事業の売上高は1000億円の大台を突破した(記者撮影)
日の丸パネルメーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)が正念場を迎えている。前2017年度には純損失2472億円と過去最大の赤字を計上。売上高の約7割を依存する米アップルが、「iPhone X(テン)」に韓国サムスンの有機EL(OLED)パネルを採用したことで受注が減少したことに加え、工場などの減損が響いた。フリーキャッシュフローは5期連続でマイナスに沈む。
危機的状況に直面する中、今年度はチャンスが与えられた。2017年に量産を始めた新型の狭額縁液晶パネル「フルアクティブ」が秋に発表されるiPhoneの新モデルに採用される見込みで、下期からの大幅受注増が期待できるからだ。この好機を逃すまいと、JDIは第三者割当増資や産業革新機構(INCJ)による支援で計550億円を調達。部材の調達など当座の運転資金に充当し、アップルへの出荷に備える。生産工程の変更などによるコスト削減も同時に推し進めることで、過去に何度も目標に掲げつつかなえられていない最終黒字化を狙う。
ただ、今期の業績が改善したとしても、2019年の新型iPhoneは全モデルが有機ELパネルを採用するという観測もある。アップル含め、市場の成熟するスマートフォン向けパネルが売上高の8割を占める現状のままでは、業績の安定化は困難だ。そこで現在は車載用パネルなどの新機軸を育成中だが、どのように舵取りをしていくのか。6月に社長に就任した月﨑義幸氏(58)を直撃した。

「経営再建中」という枕詞を外したい

――JDIにとって、2018年度は失敗が許されない年です。この局面で社長に就任しましたが、自身に課した使命は何でしょうか。

何が何でも今期の最終損益を黒字化する。これが最大のミッションだ。これまで4期連続で最終赤字を出してきたが、5期も続けるわけにはいかない。2017年度は、人員削減や中国子会社の整理、工場の減損などで1437億円の大きな特別損失を計上し、ウミを出した。あとは、業績改善に向けてひたすら利益を上げていくだけだ。JDIに関する記事から、「経営再建中の」という枕詞を早く外したい。

JDIの社長に就任した月﨑義幸氏。最終黒字目標を掲げては何度も撤回を繰り返してきたが、今期こそはと意気込む(撮影:田所千代美)

今期も4〜6月は厳しい状況が続いたが、これがボトム。今通期では売上高10~20%増を見込む。当社の4辺狭額縁液晶パネル「フルアクティブ」の技術は複数のお客様から高く評価され、今年はある意味チャンスの年。今まさに、(アップルに出荷するパネルの)下期の大増産に向けて仕込みが始まったところだ。

――社員の方々は、その危機感を共有しているのでしょうか。

もちろんそうだ。今、社長室には事あるごとに社員が駆け込んでくる。日々の小さなトラブルや売り上げの状況、今後の見通しまで、時に現場レベルの社員を含めて、逐一報告をしてくる。部屋の壁には報告事項の書かれた紙が、びっしり貼り付けられている。それに対し、私がリアルタイムで指示を出すという体制ができている。

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