ネットフリックスの最大の敵は「素人作品」だ C Channel森川亮社長が語る動画配信の未来

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――技術ばかりでは意味がないと。

IT企業として最先端技術の開発は大事だが、人をわくわくさせることをビジネス化できる才覚やセンスは、別次元のもの。特に日本では、技術さえあれば勝てると思い込む企業が多い。たとえば家電のトレンドは技術からデザインに移ってきた。韓国サムスン電子などはデザイン特化型の拠点を設け、いろいろな国のデザイナーを採用している。一方の日本は、いつまでも技術にこだわった結果、以前のようには商品が売れなくなった。

今年3月にシーズン2が公開されたオリジナル作品「ジェシカ・ジョーンズ」 では米マーベルとタッグを組むなど、ネットフリックスはコンテンツ強化を進める(記者撮影)

本当は日本も、技術だけではなく優れたクリエイティビティやセンスを持ち合わせた国だと思う。日本企業はそういうものの重要性をしっかり評価して、思い切った投資すること、専門人員をそろえることに目を向けなければ、どんな業界であっても世界で通用しなくなってしまう。

――制作会社の側から見て、ネットフリックスと組むメリットは?

一気に世界1億人以上の視聴者にリーチできるのは魅力だろう。あとは単純に動くおカネの額が大きいこと。テレビや動画サービスの場合、制作会社側の収入はレベニューシェア(動画の視聴数に応じて積み上がる支払い)ではなく、基本的には放映権や配信権を売る際の1回きりの支払い。すると当然、受注額が大きいほど制作会社の実入りも大きくなる。

むしろライバルはユーチューブ

――ライバルとして、米アマゾン・ドット・コムの「プライムビデオ」がよく引き合いに出されます。

アマゾンはあくまでEC(ネット通販)の会社なので、動画コンテンツは客引きのツールというか、そこで儲けようとしていない。一方、ネットフリックスはコンテンツビジネス一本で勝負している。ライバルととらえるのはあまり意味がないのかもしれない。むしろ個人的に興味があるのは、今後ネットフリックスと米YouTube(ユーチューブ)の戦いがどうなっていくかというところだ。

――最大のライバルはユーチューブ?

動画分野ではそうなる。これは“プロ”と“素人”の戦いだ。おカネと時間をかけた一流作品が並ぶネットフリックスと、素人視点の動画が次々投稿されるユーチューブ。違う土俵にいるように見える2社だが、どちらも消費者の「可処分時間」を奪い合う、エンタメの巨大サービスだ。

オリジナル作品の制作で使われるカメラについて、ネットフリックス社内では解像度や色味の確認を行うほどの徹底ぶりだ(記者撮影)

ECにおけるアマゾンと中国アリババの戦いも、同じような構図といえる。人気の高い商品が整然と並んでいるアマゾンに対し、アリババのECサイト「淘宝(タオバオ)」には、なんとなくうさんくさいものも含めて有象無象の商品が雑多に並んでいる。どちらで買い物したいか好みが分かれるが、地域によって多少傾向の違いがある。

LINEを経営しているときにもスタンプの使われ方などを通して感じたことだが、なんとなくアジアでは、有象無象が集まる中から宝探しをする感覚が好まれるように思う。動画の世界でも、近年はユーチューバーやインフルエンサーなど素人の作品が全盛だ。今後、プロの作品を扱うネットフリックスが欧米と同じ勢いで、アジアで浸透するとは限らない。

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