鴨緑江で腰まで水に浸かった北朝鮮人の正体 北朝鮮・中国の国境で起きていることとは?
その中間には、北朝鮮側ではほとんど暗闇が占め、中国側にも何もなく冷涼な地帯が延々と続く。人っ子一人見かけることのない道を何時間も走るあいだに、明るい小さな国境の町や、ほぼ中断された中朝の特別プロジェクト跡が現れるだけだ。完成半ばの河川ダム、ゴーストタウン化した経済特区、どこにもつながらない橋梁などだ。
国境フェンスの非常に近いところを走っていると、北に進むにつれて、あらゆる種類の監視カメラや、ハイテクを駆使したセンサー付きの恐ろしげな何重もの有刺鉄線のフェンスが、次第に、錆びたワイヤーを使った目の粗い素朴なフェンスへと変わる。それは、ボスニアの村落地帯、人里離れた自治体の境界で目にしたものに似ていた。
ある場所で主要道路を外れて運転していると、完全に役立たずの状態になったフェンスを見かけた。有刺鉄線が曲げられ、ボロ布を巻き付けて、大人でも容易にすり抜けられる。その向こうの川岸には3艘の小舟があり、すぐにでも乗せてくれそうに見えた。もっとも、この季節には水は固く凍っており、歩いて渡ろうと思えば渡ることもできる。
向こう側は、深く、いつまでも続く完全な暗闇だ。その静寂を破るのは、ときおり未舗装の道を走ってくる自転車とそれを追う犬、凍った川からバケツで水をくむ兵士くらいだ。こうした人影は、首都の平壌郊外を旅したときに目にした人々と同じように、単独行動で、荷物の重さに耐えつつ、前方の足元を見つめていた。
凍てついた平原を走り、今にも壊れそうな家屋の並ぶ村落や、小さく薄汚れた工業都市を通過するあいだ、誰かが実際に交流している姿を見ることはめったになかった。2人の女性が喧嘩していたのと、真新しい赤いブーツを履いた3人の可愛らしい少女が、水汲みをしながら遊んでいるのを見かけたくらいだ。
腰まで川の水に浸かったた人々
そして、これも北朝鮮側だが、まったく意外で理解に苦しむ場面に遭遇した。臨江市郊外の曲がりくねった道が山地に向かう場所で、腰まで川の水に浸かった人々を見たのだ。恐らく20人ほどの男性グループで、オレンジ色の奇妙なゴムのスーツを着ている。まるで昔の低予算SF映画に出てくるような代物だ。私たちはすぐに車を停め、後部座席から最も焦点距離の長い望遠レンズを取り出した。
地元の人に聞くと、北朝鮮人だという。国境の向こう側では、警備兵が男たちの作業を注意深く監視しているのが見えた。私が夢中になって写真を撮っているあいだ、同僚記者が中国人に、彼らが何をやっているのか尋ねると、砂金を探しているのだと教えてくれた。
その場で確認することは実際不可能だったので、半ば凍りかけた川で何かを探している人たちの写真を撮るだけにとどめ、あとでさらに調査することにした。その後、専門家や文献により、鴨緑江では実際に砂金採取が行われていることが分かった。