言語能力が足りない日本のビジネスパーソン | こんな働き方があってもいいじゃないか

言語能力が足りない日本のビジネスパーソン

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理想のチームを築くために

國貞 文隆(ジャーナリスト)
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チームとは、達成すべき目標を実現するためにつくられた集団だ。とくにチーム力が欠かせないビジネスの現場では、個々のリーダーシップやプロフェッショナルとしての能力が求められる。しかし、実際にチームを動かすとなると意外にうまくいかないことも少なくない。

どうすればチーム力を最大限に引き出すことができるのか。身体性をキーワードに学習する組織を追究する明治大学教授の齋藤孝さんとリーダーシップと組織に詳しいグロービス経営大学院教授の佐藤剛さんにチーム力の必要性、マネジメント方法について語ってもらった。

*対談の前編はこちら


佐藤剛
グロービス経営大学院教授
慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了。博士(経営学)現在は1自律的人材の育成と活用を通じての組織活性化、2エグゼクティブの学習モデル、3創発リーダーシップ開発などが研究テーマ。著書に『組織自律力』『イノベーション創発論』『チーム思考』など多数。

日本のビジネスパーソンには
言語能力が足りない

佐藤:サッカーの話に戻りますと、トレーニングの一つにゲームフリーズという練習方法があるんです。一つひとつの動作を一度止めて、「なぜ君は彼にパスをしたのか」という状況把握や動作について徹底的にレビューさせていく方法です。それを参考に考えると、日本企業はあるチームをつくっても、レビューすること、いわば言語化することをあまりやっていないような気がしています。

齋藤:チームスポーツは西洋の発祥です。さらに言えば、チームを支える対話の技術にも優れていた。例えば、プラトンの『饗宴』に象徴されるように、古代ギリシア時代から自由で活発な討論を良しとする文化ができていた。これは西洋の伝統です。一方、日本の場合は、黙って何も言わない方が得をする空気がある。

佐藤:私の授業はケースディスカッションですが、日本人はある程度慣れないとうまく発言できないところがありますね。慣れてくれば、どんどんしゃべりますが。

齋藤:日本人は、話すこと、参加することにある程度の強制力を持たせる段階がないとダメなんでしょうね。話させることがリーダーの役割とすれば、私はある程度、話すことの積極性を強制する面があっていいと思います。

例えば、話しやすくするために、各人がアイデアをメモして、それを15秒で発言するルールをつくる。そこで出たアイデアにまた意見を重ねていく。そうすると、自然に積極性のほうに同調圧力が働いていく。日本人の同調圧力は消極性ばかりでもないんですよ。

佐藤:日本のビジネスパーソンは言語能力をもっと意識的に身に付けたほうがいいと思います。さらに言えば、言語能力に非常に長けている人は―――これは僕の仮説ですが―――英語を通じて言語能力のトレーニングを受けているんですね。どうやってスピーチの組み立てをしたらいいか、どうライティングの構成をしたらいいのか、英語を通じて彼らは集中的にトレーニングを受けているのです。

齋藤:確かに西欧流の合理的な知性としての普遍的な頭の使い方はありますが、それができないのは英語ができないことだけが理由ではないでしょう。言語能力というのは母語が基本です。母語である日本語を使ってきっちり順序立てて手短に言う練習さえすればできるはずです。手短に言えないのは、英語ではなく母語の習熟度の問題なんですね。


齋藤孝
明治大学教授
東京大学法学部卒。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。「齋藤メソッド」という独自の教育法を実践。著書に『声に出して読みたい日本語』『雑談力が上がる話し方』『人はチームで磨かれる』など多数。ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会 委員長

リーダーシップを
重く考えるな

佐藤:リーダーシップに対して苦手意識をもつ20代、30代のビジネスパーソンにアドバイスするならば、リーダーシップなんて所詮はそのチームがよくなるための資源、リソースだと割り切ることです。

逆に言えば、カリスマ的なリーダーシップに頼ることは、思考停止につながってしまう。今は能力が足りなくても、リソースとして学んで、リーダーシップの使い方次第でチームは活性化することをきちんと咀嚼するステージだと考えればいいのです。

齋藤:「リーダーシップを身に付けろ」という言い方は、ちょっとずれているんでしょうね。リーダーシップを一つの役割だと考えるといい。

佐藤:必要に応じて役割を分担する。あまり重く考えなくてもいいと最近とくに思います。さきほど出た古代ギリシアの時代も、みんながしゃべってより良い共同体をつくっていくことが彼らの基本的な哲学だったわけですから。

齋藤:おそらく会社の草創期は、社員一人ひとりが自然にリーダーの役割を分担していたんじゃないかと思います。それが会社組織が大きくなってくると、当事者意識もなく会社に入るという感じになってしまった。新人社員に当事者意識を与えるには、フィクションのような仕掛けをつくるのも組織を活性化させる手段の一つかもしれません。

佐藤:仕掛け一つのつくり方として、注目されているのがウェイ・マネジメントです。例えば、代表的なものでHP(ヒューレット・パッカード)ウェイなどがありますが、自分たちにとって大切なものは何かを社内に長く伝えていく手法です。

創業期ならば少人数で声の届く関係ですから、お互いそれほど問題なく仕事も進む。それがある規模を超えると、どうしても役割が固定化してしまって、コミュニケーションが難しくなってくる。


齋藤:最近、文系の必要性は何かと考えることがあります。例えば、上手に雑談ができて、人の心理を読みとることができて、柔軟に総合的に問題に対処していく。チーム作りを表裏で上手にやれる人はやはり文系的です。理系の人がある程度コミュニケーション不全でも許されると思うんです。

文系の生きる道は、いわばミッション、パッション、ハイテンション。最近の学生は大人しいとよく言われますが、接し方によっては伸びる。ミッションを上手に与えてくれる上司がいれば、彼らはパッション、ハイテンションを生み出せるのです。

佐藤:そうですね。最近は自分のミッションをわかっていない上司もたくさんいますから。よく比較して言うんですが、しっかりした外資系のマネジャーと日本のマネジャーとの一番の違いは、就任演説をするかどうかなんですね。

外資系というのは全社的な戦略があって、部門ごとにミッションがあるわけです。そうすると、上司はこの半年なり一年で「俺はこういうことをやるんだ、だからついてこい」と演説をぶたなきゃいけないのです。演説して社内が納得しないと部下がついてこない力関係なんですよ。

それに対して日本の部長だと「今度部長になりました、○○です。よろしく」でおしまい。そこで自分のミッションを言葉として表現できていません。その点、外資系の場合は明確です。ある程度の分量を話しますから、スピーチ原稿も用意しています。中には「まずペーパーを読んでくれ、質問があればいくらでも聞いてくれ」というところもあります。それだけミッションを語ることは必要なことなのです。

齋藤:ミッションを文章で書くことは、すごく大事だと思います。自分の考えを何となくではなく、常に文章にする。メールでもいいし、手書きでもいい。ミッションを字で書いて机の上においておくだけでも違うんです。そうすると、一人ひとりがミッションに対する意識を持つようになるので、チーム力も高まる。書くこと、つまりミッションを言語化することは大切だと思いますね。


理想のチームを築くために必要なもの

佐藤:理想のチームの条件とは何かと問われれば、結局、チーム力を高めるには、当たり前なのかもしれませんが、やはり個の力がきちんとしていれば、組織の中や外であろうとネットワークをつくれると思っています。

とくに3.11のときに、あの修羅場の中で、医療関係者が自分の病院を仕切るだけでなく、ほかの病院との連携もきちんとできて、チームとしてまとまっていたのは個の力、それにプロフェッショナルとしての能力があったからです。

重篤な患者が山のようにいて、どこの病院に搬送されるかもわからない。そうした中で、一人ひとりが自発的にチームを組んで患者と一緒に他県の病院に移動し、そこできちんと医療行為ができるわけです。それはやはりすごいと思いました。

齋藤:私がチームらしいと思うのは、TV局で番組を立ち上げたり、雑誌で一つの企画をつくって、この時代に何をどのようにやるのかを考え続けるようなチームです。時代を感じながら、自分たちのアイデアをものすごくたくさん盛り込んで、練り上げていくことで一つのものをつくり上げていく。

アイデアをとことん考える。その考える力のタフさがあって始めていいものができる。「あまちゃん」も脚本だけでなく、配役、演出ほか様々な人たちのチーム力がヒットにつながったはずです。

私も「にほんごであそぼ」という番組の企画監修をしていますが、そこでの話し合いはスタッフからものすごくアイデアが出てくるんです。良いチームだなという感じがすごくしますね。

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