豊洲問題、ゼネコンの受注にも"疑義"がある 小池都知事に突き付けられるもう1つの難題

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これも人件費など項目別に定める標準単価はあるが、情報のタイムラグが生じるゆえ、職員は市場動向のチェックや専門業者への見積もりで、実勢価格を判断しなければならない。都中央卸売市場新市場整備部によれば「単価上昇分、都発注工事の落札率の変動を考慮し、再入札の予定価格を設定した」という。

しかし約400億円の上乗せは第1回の予定価格の6割増に及ぶ。再入札までの3カ月間の価格上昇分を考えても増額幅は大きい。都は当時の予定価格の積算根拠について具体的検証が必要だろう。

再入札が1JVずつだったことにも疑問が残る。発注は第1回の入札から、参加資格に6~7社でJVを組むことを挙げ、再入札では3棟すべてに7社JVを必須要件とした。公共工事では複数企業の技術力を合わせないと施工が難しい場合や、地元の中小企業の受注機会を均等にする目的で、JVを要件とすることはある。

JVという業界特有の共同体

入札制度に詳しい桐蔭横浜大学法科大学院の鈴木満客員教授は、「JVは企業同士の話し合いを前提とするので談合を生みやすい。7社JVは業者の数がかなり多く、それほどの規模の工事だったのか」と指摘する。

通常は入札前に個別案件について、業者間で情報をやり取りするのはタブー。それが「7社JVが要件となれば、JVの組成段階で、7社以上の業者と相談するのが普通。相手の動向を探ると、どんどん情報が漏れる」(別の大学教授)。どの業者がどの入札に参加するかが事前に把握でき、暗黙のうちに受注のすみ分けが可能となるという。

貴重な税金から支出される公共工事は、できるかぎり適正な価格で契約するのが最低条件だ。競争原理を働かすには、工事ごとに規模や内容を精査し、JVの参加要件にも慎重な判断が欠かせない。第三者機関によるチェック体制強化も急がれよう。

都の市場問題プロジェクトチームは、新市場の建築費の妥当性についても調査を進めている。巨額の税金が費やされる入札にどこまでメスを入れるか。「ワイズ・スペンディング」(税の有効活用)を掲げる小池都政の真価が試される。

(撮影:風間仁一郎)

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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