「家、ついて行ってイイですか?」成功の秘密

今やテレ東バラエティを代表する人気番組に

でも全部、実際問題として、テレ東のバラエティ制作部署にいる自分には不可能でした。「泣きながら生きて」のように10年以上にわたり密着できるマンパワーは、常に人数不足のテレ東制作局にはありませんし、東海テレビのようにドキュメンタリーを映画化し制作費を回収するという新たなビジネスモデルを模索しながら、枠として意地でも成立させていくドキュメンタリー分野にメチャクチャ情熱を燃やしてくれる上司がいたわけでもないですし、「未知の部族を取材させてください」とブラジル政府に10年以上お願いする体力もありません。また10年お願いしたところで、ブラジル政府にOKと言わせる信用力も、そもそもテレ東にはありません。かといって、インドネシア政府を騙すほどの度胸もありません。

今までドキュメンタリーを撮影したことはあったのですが、やはり「1年密着」みたいなものは、いつかやってみたいと思いつつ、撮影する機会に恵まれませんでした。

じゃあ、長期密着ドキュメンタリーの真逆の「超短期密着ドキュメンタリー」というジャンルを作っちゃえ、というのがこの番組の答えです。

「即興」という短期決戦だからこそ使える武器を手に

でも、ただ単に密着する時間が短いだけでは、フツーに長期密着ものに負けてしまいます。短期密着であることを生かす、強力な武器が必要です。それが「即興」でした。「出会ったらその場で、今すぐついて行く」。長期密着ならそんな負担の重いことはすぐに決断できません。これは短期決戦だからこそ使える武器です。

音楽にも演劇にも、インプロ(ヴィゼーション)という即興のジャンルがあります。ならば、ドキュメンタリーにも即興というジャンルがあってよいのではないかと思うのです。

「◯月×日に行きます」と、取材のアポを取ってしまうと、みんな家を綺麗に片付けてしまう。すると生活感がなくなり、面白くないなと感じたことが、それまでの番組作りのなかでありました。本来の生活感溢れる素のままの家は、アポを入れたら決して撮れないのです。

だから、数時間という短い時間を逆手にとって、今すぐやらせてもらう。そうすると取材対象に、出演者として準備する時間、言い換えれば自分を演じる準備をする時間を極力減らすことができます。

部屋を片すという行為は、まさに自分を演じる行為の一種です。部屋を片すとか、何を言うかじっくり考えて撮影に臨むという行為は、その準備期間が長ければ長いほど、演じる準備期間が長いということにもなると思うのです。

即興だからこそ描けるリアルが、この番組では表現できればと思っています。

次ページ「笑い」というオブラートに包んで
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