日本の企業と行政が、過去に例のない規模のサイバー攻撃にさらされている。9月末からの1カ月、個人情報の流出やサービス停止を公表する企業が毎日のように現れ、首相が深夜にXでソフトウェアの脆弱性への対応を呼び掛け、政府は関係閣僚会議を開いて緊急対策パッケージの策定に動いた。国内で今年公表された被害は10月9日時点で659件と、2024年1年間の645件をすでに超えている(トレンドマイクロ集計)。
流出の桁も変わった。カーシェアのタイムズカーでは約660万アカウント、焼肉きんぐでは会員1078万8963件が不正アクセスを受けた。クラウド事業者のIDCフロンティアはランサムウェアで基盤ごと止まり、495の企業や自治体が巻き込まれた。GMOインターネットグループは脅迫を受け、犯人の特定につながる情報に上限100万ドルの懸賞金を出すまでに至った。
これまでと違うのは、攻撃する側でAIが使われていることが確認された点だ。国内のサイバー攻撃の報告を受け付け、被害を受けた企業の対応を技術面で支える中立機関のJPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)は10月23日、本来はシステムの弱点を探す検査に使う、AIで動く侵入ツールを攻撃者が悪用していたことを確認したと注意喚起に書き加えた。どの流出がAIによるものかは分かっていない。それでも、AIは攻撃の何を変えたのか。被害対応の現場と分析機関に聞いた。
変わったのは腕前ではなく採算
人の指示を受けて自分で手順を組み立て、作業を進めるAIをAIエージェントと呼ぶ。このAIエージェントで最も変わるのは、攻撃の能力そのものか、それとも人手や費用といった採算か。
JPCERT/CCの佐々木勇人氏(脅威情報アナリスト)は、今起きているのは既知の脆弱性や管理不備を突く従来の手法のまま、規模と攻撃のテンポが効率化されたものだと整理した。「攻撃の成功率がものすごい高いというよりも、数と回数が圧倒的に多いので、成功した数も多い」。偵察や探索のような機械的な作業を、これまでは人間が無理に担っていたのだという。


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