「長い間、目指してきた1つの節目」ーー。日本銀行の植田和男総裁は10月30日、金融政策決定会合後の記者会見でこう述べた。この日、インフレ(物価上昇)率が目標とする2%に到達したと表明。足元では中東情勢を受けた原油価格高止まりなどを受けて物価の上振れリスクが大きいと見ており、現状の政策金利1.25%から利上げを続ける構えを示す。
統計上の物価上昇率である消費者物価指数の前年比は2022年以降、2%を時に大きく上回ってきた。日銀はこれを一時的な要因によるものとし、それらを取り除いた持続的な傾向を指す「基調的インフレ率」を対象とし、これまでは次第に上昇しているものの2%には届いていないと見なしてきた。
基調的インフレ率とは、何か1つの指標があるわけではない。日銀は消費者物価から価格変動の大きな品目を除いた値など複数のデータを算出しているが、中でも重視しているのが家計に企業、マーケットが将来的に物価はどの程度上がると見通しているかという中長期の予想インフレ率だ。6月に政策金利を1%に引き上げた時から日銀は「基調インフレが2%を超えて上振れするリスク」に言及し始めた。今回2%到達を明言することで、インフレ予想の上昇を牽制した形だ。
目標に到達したのに物価高と忌み嫌われる
「歴史的瞬間」ーー。2%到達表明をこう表現するのは、みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏だ。13年1月、デフレ脱却を掲げた安倍晋三政権の誕生を受け、日銀が2%物価目標を導入する際、理事として政府との共同声明のとりまとめに奔走した。「2%目標は未来永劫、達成できないと思っていた。この日が訪れたことがサプライズだ」。
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