中国海軍の空母「遼寧」打撃群が10月、フィリピン南部を経由する長距離航行を行った。
注目すべきは、中国艦隊が太平洋への進出経路を多様化させ、遠方での活動経験を積み重ねている点だ。日米が監視し、追尾を続けなければならない海域は広がる。
その先には、さらに大きな変化が待ち受ける可能性がある。アメリカ側は、中国が2035年までに空母計9隻を目指し、原子力潜水艦も約40隻に増える可能性を示している。実現が確定した数字ではないが、日本の防衛態勢を考えるうえで無視できない将来像だ。
中国艦隊が広大な西太平洋で継続的に活動するようになったとき、日本の潜水艦戦力は何を求められるのか。原潜保有の必要性は、この問いから考える必要がある。
勢力を拡大する中国海軍
中国共産党系の英字紙グローバル・タイムズは10月27日、フィリピン軍西ミンダナオ司令部の発表を伝える現地報道を引用し、「遼寧」打撃群が22日にサンボアンガ半島周辺を通過し、セレベス海へ向かったと報じた。
同紙に登場する中国の軍事専門家は、この航路には台風を避ける利点があると説明したうえで、日米による進路予測を難しくする効果も強調した。
従来、中国空母の太平洋進出では、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡や、台湾とフィリピンの間のバシー海峡が注目されてきた。フィリピン南方の経路にも習熟すれば、中国艦隊の行動の選択肢は増える。
中国側の専門家は、南方から東進してグアム方面へ接近できる点も指摘する。アメリカ軍の重要拠点がある海域へ至る経路を増やすことには、軍事的な意味がある。
監視する側は、複数の経路に航空機や艦艇を配分しなければならない。海峡で所在を確認した後も、どこへ向かい、いつまで活動するのかを追い続ける必要がある。中国にとっての行動の自由が増すほど、日米の監視負担は重くなる。
活動拡大は数字にも表れている。防衛省が26年3月に公表した資料によると、中国空母の太平洋進出は22年の計2回から25年の計5回へ増加した。太平洋での年間艦載機発着艦回数も、約320回から約1460回へと、約4.6倍になっている。
25年6月には、空母「遼寧」が中国空母として初めて、第二列島線上にある硫黄島より東側の海域に進出した。また、「遼寧」と「山東」の2隻が同時期に太平洋上で活動したことも初めて確認された。頻度と範囲の双方で、変化が進んでいる。
発着艦回数をそのまま戦闘能力に置き換えることはできない。それでも、外洋で航空機を運用し、経験を蓄積する機会が増えていることは確かだ。
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