畑中氏が例に挙げたのが、日本の肉食文化の歴史だ。
日本では天武天皇によって675年に最初の肉食禁止令が出されて以来、長く肉食は禁忌とされた。一方、明治時代になると、文明開化や富国強兵の流れのなかで、肉食が解禁されて国策として強く奨励され、戦後も厚生省(当時)が主導した栄養改善普及運動などを通じて食生活が洋風化した。
畑中氏は、日本の食文化の変遷を踏まえ、社会の価値観が先に変わるだけでなく、政策が人々の価値観を方向づけることもあると指摘する。
法律によって食文化が失われることには懸念も
今回の韓国の犬食禁止法についても、動物福祉や動物愛護が関わる難しい問題だと認める一方、法律によって食文化そのものが失われることには懸念を示した。長年続いてきた食習慣を法律で終わらせることに対し、慎重な考えを持っているのだ。
「動物の権利が尊重される今日、避けられない流れですが、国の法律で禁じることには違和感があります。固有の食文化を守ることも、その土地の人々にとっての権利ですから」
こうした食文化と社会の価値観、法律との関係は、日本にとっても無縁の話ではない。
例えば、鯨肉は日本で古くから食べられてきた一方、捕鯨をめぐっては国際的に賛否が分かれている。また、かつて焼肉店などで提供されていた牛の生レバーは、食中毒の危険性から12年に生食用としての販売・提供が禁止された。
韓国の犬食文化は、27年2月に大きな節目を迎える。たとえ料理そのものが日常から姿を消しても、それを食べてきた人々の記憶や、食文化としての歴史まで失われるわけではない。


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