では、何が「安直」に見えたのか。「シンデレラ」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、ドレスだ。そして、ドレスを仕事で着る女性と言われて、真っ先に浮かぶ職業の1つが、キャバクラだったのではないか。大森さんが実際にそう考えたかはわからないが、受け手はそう見た。
そしてこの連想は、最も近い道をたどったもののように見える。意外性を期待される作り手ほど、そこに「ひねりのなさ」を感じやすい。
ここからは、この「最短距離の連想」がなぜ起きるのかを、見た目の科学から考えてみたい。
「ドレス」から思いつく職業は、実は少ない
先に打ち明ければ、筆者はMVを見たあと、「では、どんな職業ならよかったのか」を考えてみた。しかし、すぐには思いつかなかった。
人は何かを見ると、それに関連する記憶が連鎖的に呼び起こされる。この仕組みは「活性化拡散」と呼ばれている(※1)。
「シンデレラ」という言葉から「ドレス」が呼び起こされ、さらに「ドレスを着る仕事」の記憶へとつながっていく。ところが、ドレスを日常の仕事で扱う職業は、そう多くない。連想の道筋が少ないぶん、近くにあるものが選ばれやすくなる。これは筆者の仮説だ。
他に筆者が思いついたのは、ホテルやブライダルなど、「おもてなし」に関わる職業だった。仮に主人公がそうした職業に就いていたら、連想は「ドレスを着る人」から「他人の幸せな日を支える人」へと動き、反応も違っていたかもしれない。もちろん、これは筆者の思考実験にすぎない。実際に反発が減ったかどうかは、誰にもわからない。また、どの職業が優れているか劣っているかを論じる意図もない。


※ログイン後、コメント入力が可能です。