問われているのは、医療機関は患者や家族から信頼を預かる場であることを理解し、行動する看護職がどれだけいるか、そして規範から逸脱した行動を防ぐ職場の仕組みがどれだけあるかということだ。
もう1つ注目したいのが、18時間にわたる夜勤中に撮影された動画という点だ。筆者も視聴したが、看護師2人の午後3時の出勤から翌朝9時の勤務終了までの様子が、53秒のキャプション付き動画にまとめられていた。
一般的に夜勤は日勤に比べ長時間で、3名前後の少ない看護師が1つの病棟を任されることが多い。
昼間は検査や手術、入院、退院などの対応で看護師が慌ただしく行き交う病棟も、深夜には落ち着く時間帯がある。さらに、夜間の病棟は管理職が不在となる時間帯でもあるため、職員同士のやりとりを上が把握しにくいという問題もある。
このような環境や緊張からの解放が、不適切な行動――白衣のポケットからスマホを取り出して動画を撮る、につながったのではないか。しかも、仲間内だけが閲覧可能なクローズドなアプリ(setlog)があれば、外部に漏れることはないので安心という心理も働いたのであろう。
病棟や患者が「コンテンツ」に
怖いのは、SNSに投稿することが日常のコミュニケーションの1つである世代にとって、職場である病棟や、患者でさえ発信するための「コンテンツ」となってしまっていることだ。仮に投稿しなかったとしても、無断で院内や患者を撮影すること、撮影しようと思うこと、それ自体が大きな問題だ。
長時間におよぶ過酷な夜勤は、看護師の心身に大きな負担となっており、バーンアウトや退職につながることもある。交代勤務を避けられない看護職の課題の1つだ。
今回動画を投稿した看護師の夜勤がどれほど忙しかったのか、業務負担の大きさがどの程度だったのかはわからない。動画では「まじ暇」というキャプションが添えられているが、それだけで当日の業務負担が軽かったと決めることもできない。
仮に勤務中に強いストレスを抱えていたとしても、それが患者を無断で撮影し、侮辱するような表現を付けて共有する行為を正当化する理由にはならない。
デジタルタトゥーと言われているように、一度インターネット上に流出した動画をなかったことにすることは難しく、患者や家族は今後も不安なまま日々を過ごすことになる。起きてしまったことに対する罪は重い。2人に下された解雇という処分と、社会からの非難は至極まっとうだと考える。


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