この件の最大の問題は、患者の同意なく撮影し、侮辱的な表現をつけて共有するという、患者の尊厳が侵害されたことと、守秘義務に違反する行為があったことの2つといえる。
看護職の職務の基盤となる保健師助産師看護師法には、秘密保持義務が定められており、今回の行為はこれに抵触する可能性がある。また、日本看護協会が作成・公表している看護職の行動規範「看護職の倫理綱領」においても、秘密保持や尊厳の尊重について記されており、今回の行為は、看護職の基本的な倫理の原則に反するものだ。
なお、現時点(10月26日時点)で、厚労省や日本看護協会からこの事案に対するコメントや声明は確認できない。
仲間内の投稿なら許されるのか
動画を投稿した看護師の行動は倫理に反するものだが、看護師は看護学校や大学などの基礎教育において、患者の尊厳を保つことの重要性や、看護職として必要な倫理について学んでいる。加えて、就職後の研修でも、個人情報の取り扱いや守秘義務について学び、必要な知識を身に付けている。
それにもかかわらず、なぜ今回のような投稿が複数の病院で見られたのだろうか。
1つは、倫理を知っていることと、倫理に基づいた行動ができるかどうかは別であるということだ。「患者の尊厳を守ることが重要」と基礎教育や研修等を通して理解していても、目の前の患者を尊厳ある対象として接することができない。この乖離こそ、この問題の核心である。
看護倫理に詳しい姫路大学看護学部教授のウイリアムソン彰子氏は、「今回の事案は、単なるSNS利用上の問題ではなく、看護専門職として最も大切にすべき患者の尊厳と人権を軽視した、極めて深刻な倫理的問題」と述べる。
その上で、「患者や家族は医療者を信頼し、自らの体や生活に関わる情報を委ねている。その信頼を裏切る行為は、看護職全体に対する社会的信頼を失墜させかねない」と懸念する。


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