そして、3人目に会ったのが晴幸さんである。最愛の母親を亡くして、救いを求めるようにマッチングアプリを始めたばかりだった晴幸さん。不慣れなためにプロフィールへの書き込みは少なく、趣味は「小登山」と書いてあるだけ。由紀子さんは「いいね」を返すことをせずに放置していたが、あるとき彼が本を読んでいる写真を見つける。
「その著者が沢木耕太郎だったんです。私も好きな作家なので興味を持ちました。初婚なのに子どもはいらないと書いてあったのも貴重です。ハル(晴幸さん)はドストエフスキーの愛読者で、購読誌は『文藝春秋』。おじいちゃんみたいな人なんです(笑)」
「そういうことはもういい」にびっくり
聞き上手できめこまやかで、ひたすらいい人だと晴幸さんを称賛する由紀子さん。だが、月1回ペースで食事をして、1年が経過しても手もつながない関係性が続いた。男友だちが多い由紀子さんはさすがに疑問を持ち、晴幸さんが山梨県に転勤になる際に勝負に出た。埼玉県にある居心地のいい実家を出て、晴幸さんと「半同棲」することにしたのだ。
「付き合っている男の人の家に泊まりに行くので覚悟はしていました。でも、ハルは夜にはすやすや寝てしまうんです。半年ほどモヤモヤして、やっとの思いで聞いてみました。答えは『そういうことはもういい、と思っている』でした」
由紀子さん自身も身体的な接触は「ハグぐらいがちょうどいい」と思っているが、それ以上のことがまったく何もないのに疑問と不安を感じ続けてきた。そのことをどう思っているのかを晴幸さんに問うたところ、「もし言っていたら僕から離れた?」との逆質問。由紀子さんは晴幸さんに初めて怒りをぶつけた。
「自分のことを心配するなんていい加減にしろ、と思いましたね。(性愛を求めないことを早い段階で)言わないのは不誠実じゃないんですか、と」


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