怒って胸のつかえが取れた由紀子さん。晴幸さんの父親と妹と会い、「人の喜ぶことをするのが好きな人たち」と感じたのも晴幸さんとの関係性を進展させる契機となった。
「今はとにかく彼のことが好きです。体型はスラっとしていて、偉ぶるところがまったくなくて、一生懸命に家事をしてくれます。地味だけど前向きな人なんです。恋人としての緊張感がなくなったことが、そのまま家族としての安心感と楽しさになりました」
2人で書く「5年日記」
インフラ系の大企業に勤めている晴幸さんだが、「姓を変えたくない」という由紀子さんの意見に同意して、2026年の春にハワイでの「夫婦別姓リーガル婚」を断行。日本国内では事実婚となってしまうが、会社と交渉して夫婦用の家賃補助などをもらっている。
「長女の私は実家ありきの人生設計を立ててきたので、転勤族の夫と暮らすのであれば住む家は用意してくれないと困ると思っていました。ハルは『結婚生活の費用は男がすべて払うもの』という考えの持ち主なので助かっています」
一方の晴幸さんは活動的で意見もはっきり言う由紀子さんを「ライブ感がある。生き生きしている」と愛しているという。では、由紀子さんが結婚相手に求めていた「ややハードな登山」はどうなったのか。
「ハルがプロフィールに書いていた小登山はハイキングのレベルなのだとわかりました(笑)。でも、テクニカルな登山は仲間と行けばいいんです。山登りの前日に男性の後輩が我が家に泊まりに来ても、ハルは仲良くしてくれています」
由紀子さんと晴幸さんの夫婦には早くも「一生の宝物」がある。1冊の「5年日記」を2人で共有し、一緒に住み始めた頃から遡って毎日の出来事をそれぞれが記録して読み合っているのだ。その一部をチラッと見せてもらったが、晴幸さんの真面目で優しい性格が表れているような筆跡だった。
30代までは、「あなたは私に何を提供してくれるの?」という態度だった由紀子さん。会社を辞め、試行錯誤を経て独立し、40代の終わりには「(ハイレベルの) アウトドアを一緒に楽しめる人であればいい」にまで行き着いた。その唯一の条件すら取り払ったところに、知的な晴幸さんが静かに笑って立っていたのだ。結婚とは、他者と出会うと同時に、本来の自分と出会い直すものなのかもしれない。


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