有料会員登録
ライフ

金曜手術でも「土曜日に執刀医が来ない」時代に…医師の働き方改革で危惧される"主治医不在"で割を食うのは患者なのか

7分で読める
手術のイメージ
医師の働き方改革で医療はどう変わるのか?(写真:Gerain0812/PIXTA)
  • 松永 正訓 医師・ノンフィクション作家

INDEX

「医師の働き方改革」により、医療現場での分業化や労働時間の管理が急速に進んでいます。過労死を防ぎ医師の権利を守る制度変更の一方で、従来の「主治医」制度が崩壊し、週末や終末期における患者との信頼関係の構築が困難になるという懸念も浮上しています。現場の変容と医療の本質を、医師でノンフィクション作家の松永正訓氏の新著『大学病院の正体』から抜粋・編集してお届けします。

医師の「働き方改革」が医療にもたらすもの

2024年4月から医師の働き方改革が始まった。日本の医療は医師の献身的な働きによって支えられてきた。特に大学病院はそうだ。

普通の会社勤めでは、1日の労働時間が記録されていて、残業に対して(ルールとしては)残業手当がつくのだと思う。でも、大学病院には残業手当というシステム自体がないので、夜中に呼び出されて緊急手術をしても、報酬はゼロである。

そういうことに不満を持つ人もいないわけではないが、ぼくが勤めていた小児外科では緊急手術こそが小児外科教室の存在理由とみんなが考えていたので、それを改革しようとする医者は皆無だった。これは小児外科医だけでなく、外科医というのはそういうものだと考える人は多い。いや、多かった。

もう現役を退いたが、東京大学の第二外科(肝胆膵外科)教授の幕内雅敏先生は、「しっかり勉強して、365日しっかり患者さんを診る。結局医者に休みはないんだ。そのことに矛盾を感じなくなれば、きっとよい医療ができるよ」という言葉を残している(阪本良弘『がんと外科医』岩波新書、2020年)。

今、教授がこれを言ったらパワハラになってしまうが、この言葉は真実だとぼくは思っている。

しかし時代は変わった。過労死する医師は後を絶たず、国はこのままではまずいと考えた。人間の権利を大切に考えるという当たり前の価値観が制度変更につながっていったわけである。「働き方改革」だ。

2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数