医師の「働き方改革」が医療にもたらすもの
2024年4月から医師の働き方改革が始まった。日本の医療は医師の献身的な働きによって支えられてきた。特に大学病院はそうだ。
普通の会社勤めでは、1日の労働時間が記録されていて、残業に対して(ルールとしては)残業手当がつくのだと思う。でも、大学病院には残業手当というシステム自体がないので、夜中に呼び出されて緊急手術をしても、報酬はゼロである。
そういうことに不満を持つ人もいないわけではないが、ぼくが勤めていた小児外科では緊急手術こそが小児外科教室の存在理由とみんなが考えていたので、それを改革しようとする医者は皆無だった。これは小児外科医だけでなく、外科医というのはそういうものだと考える人は多い。いや、多かった。
もう現役を退いたが、東京大学の第二外科(肝胆膵外科)教授の幕内雅敏先生は、「しっかり勉強して、365日しっかり患者さんを診る。結局医者に休みはないんだ。そのことに矛盾を感じなくなれば、きっとよい医療ができるよ」という言葉を残している(阪本良弘『がんと外科医』岩波新書、2020年)。
今、教授がこれを言ったらパワハラになってしまうが、この言葉は真実だとぼくは思っている。
しかし時代は変わった。過労死する医師は後を絶たず、国はこのままではまずいと考えた。人間の権利を大切に考えるという当たり前の価値観が制度変更につながっていったわけである。「働き方改革」だ。


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