乱暴な言葉を使えば、医師の生活は楽になるのだから、割を食うのは当然患者の側である。この働き方が本当に医者にとってよいことなのかもぼくには疑問がある。
医師の実力とは経験である。経験というのは常に患者のそばにいることである。若い世代の医師はこの働き方を当たり前だと思うだろうが、ぼくから見ればもったいない。ぼくと同世代の医者が集まって、この働き方改革の話になると、みんな同じように「もったいない」と言う。
ぼく自身は40歳のときに、解離性脳動脈瘤で倒れ、くも膜下出血の一歩手前の状態だったので、現在の医師の働き方に対しては複雑な思いがある。
たくさん働いても大丈夫な人もいるのは事実だ。だから一律に時間管理をするよりも、働く医師に対するメディカルチェック……たとえばメンタルが大丈夫か、脳血管や心血管障害の可能性はどうかという、過労死予備軍を調べることの方が重要なような気がする。
主治医という概念の変化
また、時間内だけに働いて、それ以外は病院には行かないという文化が定着するのはどうなのか。
やはり、医者は患者を診た方がいい。今のシステムだと、金曜日に手術が行われると、土曜日に患者の前に現れるのは執刀医ではなく、当直医である。読者のみなさんが患者だったらどう思うだろうか? 執刀医に診てもらいたいと思うのではないだろうか。
これからの時代、主治医という概念が変わっていく。
医師は週末に交代で休みを取るので、主治医が常に患者のそばにいて、何か意思決定をするということがなくなっていく。医師はグループで何人もの患者を診て、治療方針などを共有することが求められる。つまり主治医は一人ではなく、みんなである。
こういうスタイルで診療が行われるとき、小さな科・小さな病院はとても立ち行かなくなる。孤軍奮闘では医療は回っていかない。特に地方は前述したようにただでさえ医師が少ないのに、これからは医療資源の統廃合が進むのではないかと言われている。言われているが、進んではいない。地方はもうそこまでの余力がない。


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