暴走したトロッコの先に5人の人間がいる。このままでは5人が亡くなる。あなたの目の前には引き込み線のレバーがあり、そのレバーを引けばトロッコは進路が変わる。しかしその先には1人の人間がいる。あなたはどうしますか? という問いだ。これは千葉大医学部の面接にも出たと聞いている。
もちろん、正解はない。でも自分の意見は言えなくてはいけない。答え方はさまざまだろう。でも医師の卵として、他者とコミュニケーションが取れなければ合格することはできない。これが面接の意義である。
千葉大医学部の入試に面接が加わったわけ
ちょっとこぼれ話を書いておく。千葉大医学部の入試に面接が加わったのは1998年であるが、これにはきっかけがある。ちょっとした事件があったのだ。
この頃は、インターネットがまだまだ一般的に広まっておらず、千葉大医学部のエライ先生たちは、電子メールって何? とか言っていた時代である。当然、SNSもなく、個人が世界に向けて発信する手段はブログだけだった。
事件の始まりは、そのブログだ。6年生の学生が、臨床実習で経験したことをブログにアップした。その内容は、日記風にこんなことがあった、あんなことがあったみたいなものだった。おもしろおかしく、メーターが振り切れたような調子で書かれていた。また当該科の教授を揶揄したり茶化したりするような文章も含まれていた。
なぜこの文章が教授会にまで上がっていたのか知らないが(教授でインターネットをやっていたのは、ごく一部だった)、教授会は大騒ぎになった。そのブログを全てプリントアウトした資料をぼくも見たが、かなりの分量があり、忙しい学生がよくここまでたくさん書く時間があったなと感心した。いや、呆れた。
さて、一部の教授たちは自分の悪口を書かれて激怒していた。この時代の教授というのは「教授様」だったので、人から批判されることなど、ない。絶対に、ない。その学生を退学処分にすべきという過激な意見も出たと聞く。
しかし冷静に考えてみればこれはおかしな話で、教授の悪口を書こうが書くまいが、それは個人の自由である。憲法で保障された言論の自由であろう。
ちょっと間(ま)をとって教授たちは少し冷静になった。だが、ある文面が問題になった。そこに患者をからかうようなことが書かれていたのだ。


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