広瀬が惹かれたのは、言葉のシンプルさだった。
「今回の曲は、暁海と櫂の言葉にできない感情を代弁してくれたような感覚がありました。あれだけいろいろなことがあった2人に、最後はものすごくシンプルな言葉で寄り添ってくれる。なんだか神様の声のように聞こえてきたんです。すべてが報われるような、そんな感覚がありました」
初号試写で映像とともに聴いたとき、曲が物語のラストに重なり、「これでしたね!」と思ったという。
「普通の生活が送りたい」と語った4年後
2022年5月、23歳だった広瀬は、東洋経済オンラインのインタビューで、仕事を辞めたいと思うことがあった理由を尋ねられ「普通の生活が送りたい」と答えている。一方で「中途半端なままではやめたくない」とも語っていた。俳優としての「広瀬すず」であり続けることに、疲れてしまうときもあると語っていた。同じ頃、テレビ番組『日曜日の初耳学』では、大切にしている言葉として「頑張らないでいい」を挙げている。
あれから4年余り。30代が見えてきた今、これからどんな俳優になりたいのかを尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「あまり『たくさんの作品に出たい』とか、『こうなりたい』というのはないんですよね」
10代の頃は、今よりも周囲の目を意識していたという。
「10代の頃のほうが、もっといろいろなところに媚を売っていたんだろうなと思います。『こう見られたい』という気持ちもあったと思うし、『こういうお芝居が好き』『こういう映画が好き』というこだわりも、もっと強かった気がします」
「でも今は、演じていて楽しくて、自分が満足できたらそれでいいや、みたいな。どんどん自己中心的な考えになってきているんです。
私は、楽しかったな、素敵な現場だったなと思ったことに、すごく情が働くタイプなんです。そういう現場で作った作品を、たくさんの方が『面白かった』と言ってくださる。それ以上にうれしいことはないなと思うので。
これからもマイペースに、嘘なく、純粋に表現を楽しめたら、それでいいのかなって」
仕事から離れれば、家でゲームをしたり、リアリティショーを観たり。何もせず、ただダラダラと過ごす時間も好きだという。
「仕事から離れて、自分の生活に戻れる時間というか。また頑張るためにも、そういう時間って大切だと思うんですよね。だから私は、ダラダラする時間をこよなく愛しています」
その時間は、30代を前にした今の仕事観にもつながっている。
「周りの方から『30代は楽しいよ』と言っていただくこともあって。私も、そういう大人ならではの楽しさを知って、まずは自分の生活をちゃんと楽しんだうえで、お芝居ができたらいいなと思います。
そうすればきっと、生きることを表現するうえでも、もっとゆとりが生まれるような気がするんです」
映画『汝、星のごとく』で、広瀬は17歳から32歳までの15年間を演じた。一方、28歳の彼女自身は、まだ30代の自分を決めていない。
「『こういう俳優でありたい』という理想も、これからのんびり見つけていけたらいいな、という感覚ですね」
役を通してではなく、自分自身の人生を生きること。それが、演じることの難しさに対して彼女がたどり着きつつある“答え”なのかもしれない。


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