お口は、5人組バンドのようなものです。メンバーは「歯」「顎の筋肉」「舌」「唇」「唾液」。全員揃って、ようやく「噛む」という楽曲になります。これらのお口機能が複数低下した状態を「口腔機能低下症」といいます。メンバーが1人、少し疲れたぐらいでは、演奏は止まりませんが、音がジワジワとずれていくのと同じように、噛む力が落ちていきます。少しずつなので、本人は気づきません。
しかも、お口にはスマホのような「電池残量マーク」はないので、噛む力が衰えても警告は出ないのです。その代わりに無意識に食べやすいものを選びます。肉や野菜サラダなど天然素材の食べ物は減って、ハンバーグやピザなどジャンクな食べ物を好むようになります。
こうして噛む力の低下が食品の種類を減らし、たんぱく質やビタミン、ミネラルの不足に繋がります。つまり「肉が噛めない」は、肉だけの話ではなく、食卓から栄養が少しずつ逃げていくきっかけになります。
それなのに、この衰えについては、ほとんど知られていません。神奈川県の20歳以上5051人を対象にした調査(2020-2021年)では、お口の衰えを示す「オーラルフレイル」という言葉を知っていた人はわずか29.6%でした。なんと7割の人はまだ知らないのです。
知らなければ、気づかない。気づけなければ、放置したままになります。では、どうしたら気づくことができるのか? 実は、歯医者さんで、500円かけずにできる検査があるのです。
保険適用で500円ほど…“噛む力”の検査とは
友人Aに言いました。「一度、歯医者さんで調べてもらったら?」。私の開業地は地元を離れた場所なので、友人は来られません。だから、近隣の歯科医院の受診を勧めました。友人Aは渋い顔をしながら「歯は痛くないんだよ」。
そう、痛くないから歯医者に行かない。ここに落とし穴があります。噛む力は、痛みなしに下がります。しかし、友人たちとは「ステーキ屋」さんの評価が違ったことに、違和感を覚えたのでしょう。友人Aは、しぶしぶ歯科医院へ行く決心をしました。
私が勧めたのは、歯科医院で受けられる、いわば「お口の体力測定」です。


※ログイン後、コメント入力が可能です。