1965年、ポーリングは、ビタミンB群の一種であるナイアシンの高用量摂取が統合失調症の患者の助けになると主張する本を読んだ(この説は現在では支持されていない)。そして、妙に心にひっかかった。
ほとんどの薬には、安全に摂取できる量に限界があるからだ。アスピリンやアセトアミノフェンを過剰に摂取すれば、死にいたる可能性すらある。
このとき、彼の心に新しいアイデアが浮かんだ――高用量でも安全で効果があるとは、ビタミン類は何か特別な性質をもっているのではないか?
ポーリングは、ビタミンCの発見で知られる生化学者セント=ジェルジ・アルベルトとも、食品を保存するためにビタミンCを使用するプロセスの開発に貢献した生化学者アーウィン・ストーンとも交流があった。ビタミンCは現在も食品保存料として使用されており、多くの場合、食品表示には「アスコルビン酸」と表記されている。
超高用量ビタミンCを摂るべき
ストーンは、自分も妻も車の衝突事故後に回復が著しく早かったのは、超高用量のビタミンCを摂取していたおかげだと主張していた。また、私たちの食事にはビタミンCが以前ほど豊富に含まれていないため、その恩恵を得るにはもっと大量に摂取する必要があるとも論じていた。
このような意見は個人的な経験から導き出されたもので、精査された科学的根拠に基づくものではなかった。それでもポーリングはこの意見に強い関心をもった*9。
どんな分子であっても、人体が正常に機能するための必要量を知るのは困難だ*10。
当時のビタミンCの推奨摂取量は壊血病を予防する量に基づいて設定されていたが、ポーリングもストーンもセント=ジェルジも、必ずしも最適な摂取量とは言えないと主張した。ポーリングと妻は、1日あたり3000ミリグラムという超高用量のビタミンCを毎日摂取するようになった。
大量摂取のおかげでエネルギーがみなぎり、風邪をひかなくなったと感じていたようだ*11。
比較のために記すと、現在の推奨摂取量は、アメリカでは女性で1日75ミリグラム、男性で1日90ミリグラム、イギリスでは誰であれ1日40ミリグラムである*12(推奨摂取量は採用基準によって国ごとに異なる。壊血病の予防に必要な量を採用している国もあれば、血中で検出可能なレベルとしている国もある)。


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