働けなくなり、親からの援助で暮らすことになったとき、「自分は家族の負担でしかない」と追い詰められる人がいる。若者の生活保護受給者が増える今、制度や支援につながることは、「働くか、死ぬか」の二択から抜け出すための支えになり得る。AERA 2026年10月12日号より。
親を頼れない若者だけが追い詰められるわけではない。親から援助を受けられても、頼り続けることへの罪悪感が本人を苦しめることがある。
東北地方出身で関東在住の30代女性は、仕事や職場になじめず20代後半でうつ病を患い、失業。以降、アパートに引きこもりがちな生活を送る。しばらくは自分の貯金で生活していたが、それが尽きると郷里の60代両親を頼るしかなかった。
女性は当時をこう振り返る。
「どんなに休養を重ねても、散歩や日光浴をしても、自分のせいで親に苦労をかけているという罪悪感と、働けない自分への失望と『働けないなら生きている価値がない』という認知の歪みはどうにもなりませんでした」
心療内科医の勧めで受けた発達検査では、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)と診断された。
「発達障害の診断を受けたことも、よい面と悪い面がありました。これまで何をやってもうまくいかない理由が発達障害の特性にあったとわかったまでは良くても、わかったからと言ってそれが治せるわけではない。
自分が社会に出ても、結局周りの足を引っ張ってしまうだけなのだと思った時、私はどうやって生きていけばいいのかわからなくなってしまったのです」
生活保護を受けながら働ける時だけ働いていい
そんな時、姉の夫の訃報が舞い込み、精神状態が一気に悪化する。
「姉には幼い子どもが2人います。義兄が亡くなった今、両親は私より姉に支援すべきです。自分のような“穀潰し”が老親のお金を頼って生活している現実に、耐えられなくなりました」
女性は心療内科医から紹介されて通い始めた発達障害者支援センターの相談員にこう打ち明けた。
「もう死ぬしかないんじゃないかと思うんです」
泣きながら状況を説明し、最後に絞り出すようにそう口にすると、相談員は真剣な顔で言った。
「人が働くのって食べていくためだけじゃない。たとえばですけど、生活保護を受けながら、働ける時だけ働いたっていいじゃないですか」


