今回柴田さんは、30代、40代の若い人を取材して、また驚いた。広島県東広島市で就農した森昭暢さんは、最新科学の理論で土の中の微生物を活用し、耕作放棄地を豊かな土壌に変えている。広島県三原市で棚田を再生した岡田和樹さんは、地域の民俗誌を読んで先人の知恵を学び、それを未来に引き継ごうとしていた。
「アプローチは違うけど、2人とも100年先を見ている。どうやって持続させていくかを、すごく考えているんです。僕は100年先なんて考えたこともなかったから、ショックを受けて、申し訳ない、恥ずかしいという感覚でした」
やめておけと言われながらも農家になる
映画に登場する人たちは、それぞれに印象的な言葉を残している。
森さんは会社を辞めて就農する前に、80軒以上の農家を見て回った。「みんなにやめておけと言われた」にもかかわらず、農業に飛び込んだ。柴田さんは、こう説明する。
「やめておけ、と言われながらも、農家の暮らしに魅力を感じたんだと思うんです。確かにコメや野菜の価格が安すぎて、子どもが継ごうと思えないシステムが課題としてある。そこで持続可能にするための彼の方法論の一つが、農薬、肥料を買ってくるのではなく、土の中の菌の力を生かして土づくりをする、ということだった。科学と技術によって投資金額を減らし、労働時間を短縮して、経営を成り立たせている。それは世界の潮流でもあるんです」
棚田で子どもたちを遊ばせている岡田さんも、新規就農者だ。「自分の暮らしを自分の手で作っていきたいという思いが強かった」と語っている。
「自分の暮らしがしっかりと立っていれば、不安にかられて長い物に巻かれるとか、自分がいいと思わないことを仕方なくやる、という発想がなくなりますよね。お金をたくさん儲けなくても、暮らしていけるベースをつくる。悲壮感ゼロなのも彼の素晴らしいところです」と柴田さんは話す。
新潟県上越市でコメと野菜を作る鴫谷幸彦さんは、100軒ほどの消費者に宅配している。価格は自分たちの時給を意識して決める。この感覚は農家ではあまりないそうだ。また、「一軒の農家が100軒の消費者に食料を送ると、だいたい人口をカバーできる」と語る。
柴田さんは、「農産物の価格はシステムに委ねられていて、農家が自分で決められないことが多い。システムは安く、安くという方向に行くから、農家は疲弊して先細りになっていく。作る人と食べる人がもっと向き合う関係ができれば、価格の付け方も変わってくる、ということだと思います」。


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