なぜ「思わぬ」だったり、「想像もつかなかった」のかといえば、そんなことは考えてもいなかったからです。本当に一つひとつのパート、やるべきことを一生懸命やっていたら、知らないうちにポーンと当たっていた。売り上げは、お客様がくださるご褒美ですから。
よい仕事をすることそのものに喜びや愛情を持ち、自然と、やるべきことを一生懸命にやる日本の人々の姿勢は、世界でも珍しく、これは日本の文化やマインドセット、つまり日本の心、の持つ、とても大きく独自の強みだと思います。
「自然の離れ」に従ったゴディパン
——ゴディパンの成功も同じような状況だったのですか?
シュシャン はい。実はゴディパンもそうでした。
それまでに手がけたことがないパン事業で、知らないことばかりの中、本当に一生懸命、やるべきことをやっていった。当てようとか、数字を取ろうとか、そんなことは考えなかった。
その証拠に、ゴディパンの有楽町の1号店のオープンは8月でした。夏の真っ盛りに、焼きたてのパン。そして、チョコレート。もし、数字を出そう、ビジネスを当てよう、と考えたら、夏にオープンするなんて、考えられない。チョコレートやゴディバへの関心が自然と高まるバレンタインシーズンなどを狙うのが王道です。
ところが8月。この時期にオープンすることになったのは、いろいろな偶然が重なったご縁だろう、くらいにしか思いませんでした。
弓道の用語に「自然の離れ」という言葉があります。これは、「誠(まこと)」をもって正しいプロセスを一つひとつ積み重ねていくことで、やがて無理に意図したり力を加えたりすることなく、自然と「離れ」が生まれ、その先によい結果への道が開かれていく、という意味です。
自分にできるベストを尽くす。すると、自分には予測もコントロールもできないタイミングで、自然と事が起こるのです。
このとき私は、ビジネスにおいてもまた、「自然の離れ」が起こり得るものであり、それは計算して生み出せるものではないのだと気づきました。
ゴディパンも「自然の離れ」に従った。それが、たまたま8月だったのです。そして、大ヒットしました。あれやこれや計算するより、知らないうちにやってくる「自然の離れ」に従ったほうがよいことが生まれる。私がずっと意識してきたことです。
ただ、あの暑さの中で長い行列に並んでいただき、お待たせしてしまったことは、お客様に申し訳ないことでした。この点は本当に反省しています。



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