障害物検知システムの現在の状況について、JR東日本は「試験を行っている段階であり、乗務員の運転支援や将来のドライバレス運転に適用することを目指して開発を進めている」と説明している。このほかにも日立製作所が東武鉄道、東芝が長野電鉄と組んで同システムの実証実験を行うなど、日本でも複数のプロジェクトが進んでいる。
会場では日本の企業も前方障害物検知システムに必要な技術を紹介していた。総合電機の大手メーカー、三菱電機である。
同社が手がける鉄道関連の製品はモーター、インバーター、ブレーキ制御装置、空調装置、自動列車運転装置(ATO)、運行管理システム、さらには車内のドアにあるトレインビジョンなど多岐にわたる。近年は鉄道関連の売上高を公表していないが、2014年には「約2000億円」と説明していた。大手車両メーカーの売上高に匹敵する規模であり、鉄道関係者の間で、三菱電機は「車両を造らない鉄道メーカー」と評されている。海外でもロンドン地下鉄向けに空調装置を製造するなど、その存在感は大きい。
600m先の障害物を検知
イノトランスで三菱電機が発表したのはライダーに関する技術である。国土交通省は在来線列車が非常ブレーキをかけて停止するまでの距離(制動距離)は600m以内を標準とするよう定めている。これに従えば、ライダーは600m先の人や障害物を検知できなければいけないということになるが、ライダーは距離が増すにつれて、取得できる点群の密度が低くなり、検知精度が低下するという欠点がある。そのため、従来のライダーは、制動距離を600m必要とする鉄道車両への適用は困難とされてきた。
三菱電機が開発した新型のライダーは、600m先の線路上の人や物体の検知を可能とした。物体検出AIにより、点群データでは特定しづらい20cm程度の小さな物体も高精度で識別できるという。また、大型のトラックや構造物であれば900m先でも検知可能だ。この技術は昨年11月に幕張メッセで開催された鉄道技術展でも披露され、来場者の注目を集めた。担当者によれば、「今回イノトランスに出展した技術は基本コンセプトに大きな変更はないが、製品化に向けて量産部品の見直し、組み立て、試験工程の確立を進めている」という。

