ページをめくる音だけが部屋に響く。自宅やマンガ喫茶のように、誰かの話し声やテレビの音が聞こえてくることもない。
ここで、いつもと違うことに気づいた。テレビがないのだ。
自宅でも出張先のホテルでも、テレビがあると、何となくスイッチを入れてしまう。番組を見たいわけではなくても、音が流れているだけで安心するからだ。
テレビの代わりに客室には大画面で映像を楽しめる多機能プロジェクターが用意されている。しかし、今夜は使わなかった。マンガを読むために来たのだから、ほかのものに気を取られる必要はない。
初日6時間、翌日3時間マンガを読んでいた
『健康で文化的な最低限度の生活』の13巻を読み終えたのは、日付が変わった頃だった。
棚へ戻しに行ったついでに、次に読む作品を選ぶ。手にしたのは、松本次郎(画)・永井義男(作)『いちげき』。1巻から7巻までを部屋へ持ち込んだ。
4巻の途中で睡魔に襲われた。時計を見ると深夜2時過ぎ。20時頃から約6時間、マンガを読んでいたことになる。普段なら、とっくに寝ている時間だ。ベッドに横になると、数秒で眠りに落ちた。
目が覚めたのは7時半頃。睡眠時間は十分とはいえないものの、意外と身体は軽い。洗面と歯磨きを済ませ、昨夜買っておいたパンとコーヒーで朝食を取る。
『いちげき』の続きを読もうと思ったが、朝から読むにはストーリーが少し重い。そこで部屋の棚に並んでいて気になっていた真造圭伍『ひらやすみ』を手に取った。これが面白い。8時からチェックアウトの11時まで、3時間ほど読み続けた。
昨夜から合わせると、かなりの時間をマンガだけに使ったことになる。


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