これは、企業にとっては自然な流れです。クラウドでも、セキュリティでも、通信でも、重要なインフラを1社に全振りするのはリスクが大きすぎるからです。
AIも同じで、企業は複数のベンダーを比較し、業務ごとに最適なものを選ぶようになるでしょう。
投資家としても、「どこが一番賢いか」だけを追いかけるより、「どこが、どの仕事の入り口を押さえるか」を見るほうが、実態に近づけると思います。一般消費者が用途によってアマゾン・ドットコム、グーグル、インスタグラムなどを使い分けることをイメージすればわかりやすいのではないでしょうか。
AI企業の倫理が国家の理論とぶつかる時代
アンソロピックを語るうえでもうひとつ重要なのが、国家と企業の倫理が衝突する最前線にいる企業だということです。
AIが検索や文章作成だけに使われている間は、この問題は表に出てきにくかったのですが、AIが防衛、監視、公共インフラ、外交、安全保障などの分野と結びつき始めたことで、話は一気に重くなりました。
企業としては、「ここから先の用途には使わせたくない」という線引きをしたい。一方で国家は、「安全保障上、必要なら使いたい」と考えます。このズレは、今後ますます大きくなっていくでしょう。
しかも、ここには輸出規制、クラウドの設置場所、半導体の供給網、政府調達、政権交代といった政治要因まで絡んできます。AI企業の価値を考えるときに、もはや技術だけを見ていては足りない時代に入ったのです。
半導体が国家戦略物資であるのと同じように、最先端AIもまた国家戦略のど真ん中に入りました。AI企業は、単なるソフトウェア企業ではなくなりつつあり、規制、外交、軍事、産業政策といったものの影響も受けざるをえない存在へと変わってきたことを理解しておきましょう。



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