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ライフ #ヤングケアラーの僕が東大に合格するまで

東大には「縦の多様性」が存在しない 体験格差という壁 ブレイディみかこ×元ヤングケアラー東大生・清野孝弥対談(前編)

10分で読める
ブレイディみかこ 清野孝弥生
教育格差や、大学進学後にも残る「見えない階級」の壁とは?(写真:ブレイディ氏はShu Tomioka撮影、清野氏は本人提供)

INDEX

「生活保護世帯」、そして「ヤングケアラー」という過酷な環境で育ちながら、東京大学への合格を果たした清野孝弥氏。彼が自らの経験をつづった書籍『ヤングケアラーの僕が東大に合格するまで』をきっかけに、イギリス・ブライトン在住の文筆家・ブレイディみかこ氏との対談が実現した。
前編では、日本とイギリスの教育格差の現状や、トップの大学における「縦の多様性」の欠如、そして大学進学後にも立ちはだかる「見えない階級」の問題について語り合ってもらった。

東大受験は貧困からの「現実逃避」だった

『ヤングケアラーの僕が東大に合格するまで――家事、介護、そして勉強 それでも僕はこの家から東大に行く』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)

ブレイディみかこ(以下、ブレイディ):『ヤングケアラーの僕が東大に合格するまで』を読ませていただいて、まず文中に「他の人たちから憧れられる存在になりたい」という言葉が出て来たので、「憧れられたい」というパワーワードが頭に浮かびました。

私の好きなイギリスのバンド、ザ・ストーン・ローゼズの曲に『I Wanna Be Adored(憧れられたい)』という曲があるのです。まさに青春のパワーワードですよね。

また、東大に合格するという目標に向かってがむしゃらに勉強したことが、生活保護という現実からの「現実逃避」と書かれていたのが非常に深いと感じました。

一家心中を覚悟した中学3年生の冬から、僕は不条理に抗いたくて、逆らいたくて、東大合格が人生の意味、生きる希望だと思って勉強を続けました。しかし冷静に考えてみれば、東京大学に合格できたとしても、両親の病気を治せるわけではありません。生活保護を抜け出せるわけでもありません。
だから、僕は夢を見続けていたんだと思います。「生活保護の子ども」という現状から目を背そむける、現実逃避にすぎなかった。これは残酷な現実です。
(『ヤングケアラーの僕が東大に合格するまで』p.212より)

依存症の患者の方は、薬物やアルコールを大量に摂取して寝ることを「寝逃げ」と呼ぶことがあるそうです。清野さんの「勉強」とは一見正反対に見えますが、耐え難い現実から逃げるために必死で何かに没頭しなくてはならないという点で、何か自己防衛の本能なのかもしれないと思いながら読みました。

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