清野孝弥(以下、清野):細部まで読んでいただきありがとうございます。実際、勉強は現実逃避そのものでした。日本においては、貧困世帯の子どもへのサポートはまだまだ不十分だと感じています。
「生活保護世帯からの進学NG」という日本の課題
ブレイディ:私が以前『THIS IS JAPAN』という本を書いた時に、日本の貧困支援を行うNPO団体でボランティアに参加し、取材をしたことがあります。その時、「日本の生活保護の子どもは大学に進学できない(進学するには世帯分離が必要になる)」と聞いて、「ええ、そうなんですか?」と非常に驚き、憤りました。
オックスブリッジなどの一部の超名門は別ですが、一般的なイギリスの大学はいわゆる「恵まれない家庭」の子どもを積極的に受け入れる制度を持っています。
イギリスでは、住んでいる地域の郵便番号(ポストコード)を入力すればそこが貧しい地域か判断できるツールを教育機関が使っています。さらに、通っている中学校が荒れていて成績が悪いとか、両親が大学に行っていないとか、あるいはフリーミール(無料給食)の対象家庭であるかといった項目でポイントが加算されます。
フリーミールの対象の家庭というのは、生活保護受給家庭も含まれています。そうした「恵まれない家庭」と認定されると、大学が求める点数に少し届かなくても入学できる、いわば下駄を履かせてもらえる制度があるのです。日本の制度は全く真逆で、苦しい境遇の子どもにさらに逆境を与えるのだなと思いました。
清野:日本の場合、女性の割合を増やす「女子枠」のような施策は増えましたが、ブレイディさんが紹介された地域格差の是正枠や、貧困世帯へのアファーマティブ・アクションといった、事前に下駄を履かせるという発想はほとんど導入されていません。
ただ、2018年以降は、入学した後に奨学金などで経済的な理由での中退を防ごうとする動きは出てきているため、一度入学さえしてしまえば一定の支援を受けることは可能です。


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