「そこから、都市で生きるスズメのたくましさが見えてくるんですよね。『ビニールを使っているからよくない』と大人が決めつけるのではなく『これはどういうことなんだろう』と子どもたちが問いながら、スズメの生態系や都市環境に想像を膨らませていく。すると子どもたちが描く鳥の絵も、くちばしの角度や羽の色まで、細部までこだわりが出てきて、とても生き生きとしたものになっていきました。
鳥との関係が深まることで、私たちが共生している鳥についての考えや思いが深まり、さらに、鳥とつながりのある都市の生態系にも目が向くようになったんです」
「六本木にも鳥がいるんだ」という子どもたちの何気ない気づきは、園外の人や企業とつながることで、数カ月にわたる探究へと広がっていった。この取り組みは六本木園のひとつの伝統となり、現在も毎年、鳥の探究や巣箱の設置が行われている。松本さんは、そこにCCの役割がよく表れていると話す。
「園に常駐しているCCは、子ども一人ひとりのことも、地域のことも、職員がやりたいこともよく知っています。だから、子どもたちの興味と地域にいる人をうまく結びつけられる。単に『鳥に詳しい人はいませんか』と探すだけでは、同じような出会いにはならないと思うんです」
「あなたは現場をわかっていない」と言われた創業者
資金と人員の仕組みが整っても、それだけで園は回らない。開園後に直面したのは、経営の問題だけではなかった。自分が思い描いてきた保育を、実際の現場でどう形にしていくのか。松本さんはそこで、もうひとつの壁にぶち当たった。
園に集まったのは、いずれも経験豊富な保育者たちだ。当然、それぞれが自分なりの保育観を持っている。例えば松本さんが、「子どもの学びを社会につなげたい」と熱く語ると、現場からは「具体的にどうするのか」と問われた。当時、まだ一般的ではなかったドキュメンテーション(子どもの学びのプロセスを写真やメモで記録し、可視化する手法)の導入を提案した際には、「保育者をカメラマンにするな」という意見も上がった。
「今振り返ると、当時の僕は『あたまでっかち』だったんだと思います。子どもの環境や保育について自分なりにビジョンはあった。しかし僕が影響を受けてきたのは海外で生まれたアプローチで、実際の現場との間にはギャップがあった。いま思えば、とても偏っていたんですよね」


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