ところがスタートした園には、ほとんど家具がなかった。家具を買う余裕もないほど、経営が厳しかったのだ。
「ホームセンターで木材を買ってきて、職員と一緒に家具をDIYでつくっていました。みんな木工の技術がどんどん上がっていって(笑)。でも、僕自身にとっても『子どもにちょうどいい棚の高さってなんだろう』『安全な面取りはどうしたらいいんだろう』といったことへのセンサーが磨かれた経験でもありましたね」
「既成の家具がなくても大丈夫」と自分に言い聞かせてはいたが、一歩間違えれば破綻しかねない深刻な状態。その理由は、大きく2つあった。
1つは職員配置だ。「まちの保育園」では、例えば朝、子ども一人ひとりが自分のやりたいことを選ぶのが特徴だ。保育者は、その日の子どもたちの様子を見ながら、遊びや学びをサポートしていく。
人員を厚く置くほど圧迫された経営
「一斉保育なら、ある程度『こうしよう、ああしよう』というプログラムに沿って進められます。でも、子ども一人ひとりの思いや探究の芽に沿って環境をつくろうとすると、小グループ活動がいくつかできる。保育者も臨機応変に動かなければならないし、自分で研究する必要も出てくる。それを一般の園と同じ職員配置でやったら、先生たちに余裕がなくなってしまいます。だから少しゆとりのある厚めの配置にしようと思ったんです」
しかし、認証保育所の補助単価は決まっている。人員を厚く置けば置くほど、経営は圧迫された。
もう1つは、家賃だ。将来の認可保育園への転換を見据えて、認可並みの広さを確保していたため、家賃や設備費も重くのしかかった。


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