この一風変わった保育園をつくったのが、「まちの保育園・こども園」を運営するナチュラルスマイルジャパンの代表、松本理寿輝さん(46)だ。現在は都内で保育園4園・こども園2園(定員計498人)を運営する。
2001年の大阪教育大学附属池田小学校の事件などをきっかけに、子どもが過ごす施設では安全管理がより強く意識されるようになった。保育園や幼稚園が地域に対して閉じていく傾向があるなかで、「まちの保育園」は安全を守りながら、あえて地域に開こうとしている。
「僕たちは分断されがちな境界を曖昧にしていくことを意識しています。街全体や、そこで働く人々を子どもたちの学びの資源、育つコミュニティとして位置づけたい。保育園のなかだけで完結しない環境をどうつくるかが大事なんです」
園には、地域と子どもをつなぐ専任の役割「コミュニティコーディネーター(CC)」がおり、職員も一般的な配置基準より厚めに配置している。
しかし、保育園の収入を決める補助金の単価は一律だ。その理想を本気で実現した結果、最初に直面したのは厳しい現実だった。開園当初は、家具さえ満足に買えないほどの資金難。代表自ら園の外で稼いで、運営費を補う自転車操業に陥った。
「もし自分が病気で倒れたら、園の運営が立ち行かなくなってしまう」
そこから15年。子どもを地域のなかで育てるという理想を、どうやって続けられる事業にしたのか。ひとつの園の自転車操業から始まった試行錯誤の日々を追う。
理想の保育を支えるため、園の外でも奔走した創業期
松本さんが保育の世界に関心を持ったのは、一橋大学商学部の学生時代、ボランティアとして児童養護施設を訪れたことがきっかけだった。子どもたちの創造性に心を動かされ保育園の開設を決意。博報堂や不動産ベンチャーで経験を積んだあと、生活費を切り詰めながら開園準備を進め、2011年4月、練馬区に「まちの保育園 小竹向原」を東京都の認証保育所として開園した。


※ログイン後、コメント入力が可能です。