──安倍元首相の評伝はいつ頃から構想しましたか。
通算在任日数が桂太郎を抜いて歴代最長となった2019年11月ごろから、いつかは書きたいと考えるようになった。20年から執筆を構想し、情報公開法を用いて、内政や外交の行政文書を入手し始めた。ただし、安倍は首相退任後に最大派閥の長となっており、執筆はそうとう先になると考えていた。
しかし22年7月に銃撃死事件が起きた。
没後は旧統一教会や安倍派の裏金問題をめぐる報道が続いたが、それだけでは安倍政治の本質を捉えきれないと考えた。生い立ちまでさかのぼり、内政と外交・安全保障を総括したいとの思いが強まった。
──安倍政権の外交・安全保障を高く評価している面があります。
外交での最大の功績は、日本を既存の国際秩序の受け手から「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という秩序構想の提案者に転じさせたことだ。FOIPは台頭する中国を念頭にインド太平洋で「自由貿易」や「法の支配」を重んじ、地域の安定と繁栄を目指すもので、主要国の共通言語になった。
日本の首相の構想がこれほど主要国に浸透したのは初めてであり、卓越した構想力を示すものだ。
構想の大胆さと運用のもろさが並存している
──しかし「安倍をリアリスティックな戦略家と評するには、留保を要する」と辛口です。
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