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──戦前のソ連は、日本を脅威として強く認識していたようですね。
実は、ソ連は18年のシベリア出兵時から、日本を極東の脅威と見なしてきた。シベリアの奥まで軍隊を送り込んできた日本との緩衝地帯として、「極東共和国」を成立させたほどだ。
ソ連側は日本との国交樹立(25年)以前から極東において対日諜報活動を展開してきた。もちろん諜報の対象は世界各国だったが、本書では特に日本について、誰がどんな情報をモスクワに送っていたのかを、ロシア側の資料を詳細に読み込み分析した。
──ソ連の対日諜報活動では、リヒャルト・ゾルゲ(1895〜1944年)がよく知られています。
「ゾルゲ諜報団」を組織し、33年から日本で活動した。日本ではソ連スパイの代名詞的な存在だ。ドイツ人ジャーナリストの立場で、駐日ドイツ大使館の信頼を獲得し諜報網を築いた。
現在のロシアで、ゾルゲは「良質な情報をモスクワに送っていた」と、その活躍ぶりが半ば神格化されている。しかし、資料からはゾルゲがそれほど立派なスパイだったことはうかがえない。ゾルゲの収集した情報は、あいまいなものや両論併記も多く、出所が怪しい場合もあった。
スターリンもゾルゲから送られてくる情報を強くは信頼していなかったようだ。41年6月の独ソ開戦、つまりドイツによるソ連侵攻開始の正確な日付をモスクワに伝えたのも、実はゾルゲではなかった。結局、41年にゾルゲをはじめとする諜報関係者は日本の特高警察に一網打尽にされてしまう。
──それにしても、ソ連の諜報機関が日本社会にかなり浸透していたことに驚きます。
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