「いかに現代社会や現代人の生活とつなげるか」に頭を悩ませた
──宣教師により伝わった、自分の体をムチで打ちたたいて罪をあがなう「ムチ打ち苦行」など、現代の感覚では噴き出してしまうような話が満載です。『週刊文春』での2年半に及ぶ連載が基になっていますが、毎週のネタ探しに苦労しませんでしたか。
幸いなことに、ネタ選び自体にはそれほど困らなかった。史料を長年読んでいると、論文にはならないけれど、一般の読者から見ればそれ単体でも十分に面白い日常の謎や珍エピソードがたまっていく。それらを書き留めたネタ帳は、すでに20冊ほどになっている。
むしろ毎週頭を悩ませていたのは、ネタそのものよりも「その歴史のネタをいかに現代社会や現代人の生活とつなげるか」という点だ。現代との接点をどう意識し、話をどう展開させるかを考えることに時間を費やしていた。
──「日本史最大の謎!」の項では、有名な事件の真相よりも、室町の庶民の日常のほうがよっぽど謎だらけだと書かれています。
テレビや雑誌で「日本史最大の謎」といえば、本能寺の変の黒幕や坂本龍馬暗殺の真犯人といった話題ばかりが取り上げられる。しかし私にとっては、本能寺で織田信長が殺されたことよりも、室町の庶民がどうやって時刻を知り、朝晩どんな食事を口に運んでいたのかといった、日常の謎のほうが大問題だ。
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