表向きは「厳正な選考」を謳いながら、実際は事前交渉で勝負が決まっている――併願制度にはそうした「建前と実態」の構図がある。
本来、入試前に合格を約束することは、入試の公正性という観点から認められていない。東京私立中学高等学校協会(以下、私学協会)と東京都教育委員会の毎年の合意事項では、私立高校と中学校の間で行う事前の入試相談について、「合格の可能性を述べるにとどめ、確約、内定はしないものとする」と、定められている。
では、実際にはどうなのか。ある都内私立高校の入試結果に目を向けると、合格者数は受験者数を下回っているので、一定数の不合格者が出ており、合格の確約は存在しないように見える。
しかし、入試結果の注釈には「併願優遇ありの倍率は1.00」とある。
受験者には、事前の入試相談を経て併願優遇の対象となった生徒と、そうでない生徒が混在しているが、併願優遇の対象者については倍率が1.00だという。つまり、対象者は実質的に全員が合格していることになる。
「確約、内定はしない」と定める一方で、実際の入試では「併願優遇あり」の受験生が100%合格する。この数字が示すのは、高校入試の制度上の建前と、受験現場の実態との間に横たわる、大きなねじれである。
「偏差値による合格確約」の実態
この「建前と実態のねじれ」は、合格確約の判断に用いられる「選抜資料」にまで及んでいる。私学協会と東京都との取り決めには、こんな文言もある。
「高等学校の行う入学者選抜は、公教育としてふさわしい適切な資料に基づいて行い、業者テストによる偏差値等を資料として利用しない」
背景にあるのは、平成初期に全国で進んだ「業者テスト追放」の流れだ。1992年、鳩山邦夫文部大臣(当時)は、公立中学校に広がっていた業者テストや、それによって算出される偏差値を基にした進路指導を問題視し、「学校現場から偏差値を追放する」と宣言した。いわゆる「偏差値追放」である。
この通達は現在も効力を持ち、建前上、業者テストの偏差値を高校入試の選抜資料として利用することは認められていない。推薦や併願の基準についても、表向きは中学校の調査書、つまり内申点などを中心に判断することになっている。
ところが、実態としては、偏差値による「確約」が行われている。


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