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習近平の母校「清華大」への留学で炎上した29歳福岡市長候補、「完璧な物語」に生じたほころび

11分で読める
佐々木彩乃氏
福岡市長選に立候補を表明した佐々木彩乃氏=18日午前、福岡市(写真:共同)
  • 浦上 早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員(コミュニケーションマネジメント)
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ネット上で清華大学が「習近平氏の母校」と政治化された。そして皮肉なことに、本人側も防御的な説明を重ねることで、「清華大学で学んだこと自体が政治的な釈明を必要とする経歴である」という前提に乗ってしまったように見える。本来、そこに乗る必要はなかったのではないか。

しかも中国との距離を強調しながらも、その直後には、これから必要なリーダーは、中国をよく知る「知中派」だと語った。

ここにまた「?」が生まれる。

中国留学は特殊な経歴ではない

佐々木氏が大学生だった2010年代後半は、現在ほど「経済安全保障」という言葉が社会の前面に出ておらず、むしろ深センを起点とする中国のイノベーションへの関心が急速に高まっていた。

2018年、JETROは「日本の産業界が深センに注目する」と紹介し、電子産業の集積やサプライチェーンを背景とした独自のイノベーション・エコシステムを分析している。

当時の空気では、中国の有力大学で学んだ経験は、少なくとも大企業の採用で警戒されるような経歴ではなく、語学力や国際経験、成長市場への理解を示す強みになりえた。

シェア自転車の爆発的な普及や深センブームなどで、2010年代後半は中国のイノベーションが注目され日本人学生の留学も盛んだった。写真は深セン(写真:筆者撮影)

筆者の周囲でも、30代前後の知人には、早稲田大学と復旦大学のダブルディグリーを取得して大手通信キャリアに入社した人、復旦大学大学院からNHKに入った人、就職浪人を経て中国へ語学留学し、三井物産に進んだ人など枚挙にいとまがない。

その後、日本と中国の距離感は大きく変わったが、佐々木氏の世代が大学生だった時代に、大学生が「これからのキャリアを考えるなら中国を見ておきたい」と考えたこと自体は特殊な選択ではない。

佐々木氏の中国経験を過大評価する必要もない。

同氏が清華大学シュワルツマンスカラーズに在籍した2020~21年度は新型コロナ禍のため、プログラム自体がオンラインで実施された。したがって、清華大学の修士号を取得しているとはいえ、中国で一定期間暮らし、中国社会や中国の組織の中に身を置いてきた人物と同じ種類の「中国経験」を持っているとは評価できない。

中国との近さを警戒する声がSNSで大きくなっているが、「中国」で飯を食っている筆者のような人間にとっても、佐々木氏が中国を理解していることを「強み」として語りたいのか、中国との接点を「リスク」とみて距離を取るのか立ち位置がわかりにくい。他の公開情報と照らし合わせると、自分の軸より「見せ方」を意識して、説明を都度編集しているように映る。

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