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ローカルAIエージェント時代の入り口を作ったアップル
前編記事では、社内で比較的手軽に生成AIを動かせるようになってきた背景と、その性能についてお伝えした。後編は、実際にやってみるとどうなるか、というテーマでお届けする。
使用しているのは、引き続きアップルの新しいマック・スタジオ(M5 Ultra、256GBメモリ、4TB SSDで217万3800円)と、いくつかのAIを動かすためのソフトウェアだ。マック・スタジオには「LM Studio」という無料ソフトを入れ、AIモデルをダウンロードして動かしておく。これを他のパソコンやスマートフォンとリンクさせれば、推論エンジンとして使えるようになる。
この推論エンジン(頭脳と言い換えてもいいだろう)を利用する方法はいくつかあるが、最も簡単なのは、パソコンなら「Bionic(バイオニック)」というアプリを、スマートフォンなら「Locally(ローカリー)」を入れることだ。別のコンピューターで動く頭脳を、手元の端末から利用できる。BionicはウィンドウズとMacで、LocallyはiPhoneとiPadで動作する。
AIを動かすマック・スタジオには別端末から手軽にアクセスできる
Bionicは7月に出たエージェント型のアプリで、単なるチャットアプリを超えて、チャットGPT WorkやClaude Coworkのように、表計算を作ったり、報告書を書いたり、プレゼンテーションやWebサイト構築などの作業を手伝ってくれる。
iPhoneで動作するLocallyでは、外出先から会議室のAIに頼みごとができる。いずれもLM Studioのアプリケーションで、「LM Link」というサービスを通じて、ネットに接続できていればどこからでも、別のコンピューターで動作しているAIにリモート接続できる。
そこで今回、マック・スタジオに特徴の異なる2種類のモデルを選び、同時にロードしておいた。長い文書を読ませるには、一度に扱える文章量(コンテキスト)が大きいDeepSeek V4 Flashを使う。今回の設定では本にして3〜5冊分を一度に読み込めるため、大量の文書を処理しても破綻しにくく、情報の理解が深い。このモデルは、大量の文書を預けてその内容について質問や検証をする使い方(RAGと呼ばれる手法に近い)で本領を発揮する。
伝票処理やメール処理のように、正確さが求められる一方で情報量はあまり大きくない細かな仕事にはQwen3.8-27Bを用いる。このモデルは写真などの画像も理解するため、スマホで撮った領収書をそのまま渡せる。コンパクトなので、より正確な動作が期待できる8ビット量子化版でも、DeepSeek V4 Flashの4ビット量子化版と256GBメモリに同居できる。
どちらも無料で、ダウンロードは合わせて約180GB。セットアップは実に簡単で、ダウンロードして動かしているうちに理解できる程度だ。社内での導入なら、ちょっとパソコンに詳しい人に頼めば動かせる程度のハードルの低さである。
伝票の山を渡してみる
最初に頼んだのは経費の伝票だ。PDFとして文字データが入っているものもあれば、レシートを写真で撮っただけのものもある。実物を集めてくるのは大変なので、テスト用のデータはAI自身に生成させた。
領収書と請求書のPDFを40枚入れた伝票入れのフォルダをBionicに渡し、「日付と支払先と金額を表にまとめて。二重計上、二重精算の場合は重複するデータを外し、文書内で識別できる数字に整合性がないものには印を付け、月ごとに集計したExcelファイルにして」と頼んだ。
するとBionicは、作業を完了するまでの手順を表示したうえで、その計画を実行していく。あとは基本的に作業が終わるまで放置するだけだが、途中でふと思いついたので、追加の指示を与えた。
1. 伝票を『請求書』『領収書』『それ以外』に分ける
2. それぞれ『処理済み』フォルダに入れ、経費のジャンルごとに分類する
3. 元のフォルダから正しく移動したことを確認したうえで、元の位置から削除する」
このように、途中で思いついたことがあれば追加のリクエストを入れることもできる。逆にBionicのほうから、情報が足りないときにユーザーへ質問が来ることもある。これは悪いこととは言えない。長い作業の途中で、分かれ道をどちらに進むか尋ねているだけだ。
こうした質問がないほとんどの時間、ユーザーは別の仕事をしていればいい。今回の処理では14分後には答えを書き始め、18分後には表計算のファイルができていた。読み取りの誤りはなく、意図的に紛れ込ませていた二重提出の伝票を1件見つけた。合成した仮の伝票はテキスト情報を持つPDFで、画像ではない。
だから読み取り誤りがないのは想定内だが、二重伝票を的確に言い当てるのは見事である。
経理の担当者が最後に目を通すことが前提なら、一次チェックの用途としては十分だろう。
なお、スマホで撮った写真の領収書についても、別途20枚ほど試してみた。こちらはマック・スタジオではなく、より小さく安価なMac mini(マック・ミニ)で処理したが、それでも5分ほどで読み取りと分類を終えている。かすれた文字や傾いた写真が混じる実物の伝票でも、写真を撮って放り込んでおけば、あとはAIが読む。
ところでこの処理中、こんな追加指示も試しておいた。
・重複する伝票は片方を有効にするだけでなく、重複した伝票を分類するフォルダに入れておいて
後から思いついたことも指示として入れておけば、途中で作業の方針を微調整してくれる。会話を途中で終わらせる必要はなく、作業途中に変更指示を行えるのだ。
試行錯誤の末によい解決策が見つかって結果に満足したら、「いまやったことを覚えておいて」と頼んでおこう。するとBionicは手順を「Skills」という形式で書き留めて保存し、翌月は「先月分と同じ形式でやって」の一言で済むようになる。
担当者が異動しても手順は残る。他人に仕事の手法を教えるのと同じ感覚でAIに仕事を教えれば、それがスキルとして蓄積されていく。しかもこの形式は標準化されているので、他の部署や別のシステムに移っても再利用できる。
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