私が面白いと感じたのは、こうした技術が「スペック表の中だけに存在していない」ことだった。
箱根のワインディングでは、路面から入ってくる微妙な外乱、コーナー途中で加わる横方向の力、そして4つのタイヤから返ってくる情報が、モノコックシャーシを通じてドライバーへ伝わってくる。
そして、それらの入力がバラバラに入ってくる感じがない。四隅から入ってくる情報をモノコックシャーシ全体で受け止め、うまくいなしている。思わず笑みがこぼれた。
私は「よくぞここまで!」そう思った。
DB12 S Volanteの車重は1820kg。それだけの存在感を持つ車体に700PSという途方もないパワーを与えながら、それをドライバーの手の中に収めている。
700PSのFRレイアウトが織りなすピュアなハンドリング
しかも駆動方式はフロントエンジン・リアドライブだ。現代ではもはや贅沢とも言えるピュアFRのコントロール性も高めている。700PSを暴れさせるのではなく、意のままに使わせてくれる。そこに、DB12 S Volanteのハンドリング技術のすごみがある。
21インチホイールに組み合わされるタイヤはMichelin Pilot Sport S 5 AML。フロント275/35 ZR21、リア325/30 ZR21という組み合わせだ。ビルシュタインDTX電子制御アダプティブダンパーが路面から伝わる入力を整理し、フロントのダブルウィッシュボーンとリアのマルチリンクの足まわりが、4本のタイヤを路面へとつなぎ止める。
ブレーキングからコーナー入り口でのアプローチでステアリングを切り始める。フロントがラインを捉え、ノーズが自分の意図した方向へ向かっていく。ライントレース性の高さを感じながらアクセルを少しずつ開けると、フロントからリアへのウェイトトランスファーが正確に行われる。
325mm幅のリアタイヤが路面をつかみながら、V8が生み出す800Nmという大トルクを受け止める。その一連の動作に、妙な“間”がない。そのすべてがひとつの動作としてつながっている。


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