ステアリングを通じて、その情報が驚くほど明確に伝わってくる。まるで自分の手がクルマの四隅まで伸びているような感覚だ。私がグランドフィードバックと呼びたくなったのは、まさにこの感覚だった。
目の前にあるDB12 S Volanteは、ロングノーズを持つ優雅なGT(グランドツーリング:イタリア語ではグランツーリスモ=長距離を快適かつ高速で移動できるように設計された高性能な自動車のジャンル)だ。
しかし走り始めれば、ドライバーの意思に対して穏やかだが素直に反応する。このギャップが、今回の試乗で最も印象に残った。
700PSのV8ツインターボと、それをシームレスにつなぐ8速ATのマッチング
DB12 S Volanteの心臓は4.0L V型8気筒ツインターボ。最高出力700PS、最大トルク800Nm。現在市販されている公道走行可能なマシンでもトップクラスのスペックを誇り、明らかにアグレッシブな魅力がある。
だが今回、私が引かれたのは、700PSというパワーそのものよりも、それをどう使わせてくれるのかという部分だった。試乗コースに選んだ東京駅周辺では、アクセルペダルにほんの少しつま先をあてるだけで十分だ。2750rpmから6000rpmの回転域で最大トルク800Nmを発生するV8は、街中でその能力を誇示する必要などない。
むしろ印象的だったのは、その豊かなトルクを受け止めるZF製「8HP75」8速オートマチックの仕事だった。トルクに任せてシフトアップしていく、その感覚が実にスムーズだ。まさにシームレスにギアがつながっていくようなのに、決して無機質ではない。
ほんの少しだが、V8エンジンならではのファイアリングオーダーを感じさせてシフトアップしたことを体に伝える。むしろ、変速という機械的な出来事を完全に消してしまわず、ドライバーが感じ取れるぎりぎりのところに残しているような感覚だ。


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