高温によるコメの品質低下は、将来における大きな課題として認識されています。もしも適応策を取らなければ、全国平均の白未熟粒率は今世紀半ばに約20%、今世紀末に約40%まで高まると推計されているのです。また、今世紀末のコメの全国平均収量が、現在の約80%になるという見積もりも示されています。
ただし、これは現在の品種や栽培方法を前提にした試算であり、品種改良や栽培技術の変更によって影響を抑えられる可能性もあります。
農業は、人間が田畑を管理しているように見えますが、実際には生態系の働きに大きく支えられています。土壌が作物を育て、水が供給され、昆虫などが花粉を運び、周囲の生き物との関係の中で作物は育ちます。私たちが「自然の恵み」と呼ぶ、こうした生態系の働きは「生態系サービス」とも呼ばれます。
温暖化が進むと、生態系サービスによるこうした支え方が変わってしまう可能性があります。
たとえば、花粉を運ぶ昆虫の活動時期と、植物の花が咲く時期がずれれば、受粉がうまくいかなくなるおそれがあります。病害虫や雑草の分布が変われば、これまで問題にならなかった地域で被害が増えることもあります。
畜産でも、暑さによって家畜の食欲や繁殖、乳量などに影響が出る可能性があります。したがって食料生産への影響は、作物そのものの温度への反応だけではありません。周囲の生態系サービスが温暖化によって変わることで、食料生産全体が不安定になりやすくなるのです。
海の変化を直接受ける「水産業」
水産業も温暖化の影響を強く受ける分野です。海水温の上昇や海洋酸性化は、海の生き物の分布や生態系に影響を与えます。その変化は、当然ながら水産業にも及びます。
水産業にとって重要なのは、魚が「どこにいるか」だけではありません。漁業は、対象となる魚の種類、漁場、漁法、港、加工、流通、消費地との関係まで含めて成り立っています。したがって、これまである地域で多くとれていた魚が減っても、別の地域でその魚の漁獲量が増えれば、問題が解決するとは限りません。
なぜなら漁獲量の変化は、漁業者の経験や設備、港の機能、加工場や流通網、地域の食文化やブランドなど、さまざまなことに影響が及ぶからです。


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