一定の飲食スペースを持つ空間の呼び名には、フードコートやイートインなどがある。私たちの身近にあるフードコートやイートインは、どちらかといえば昼間のイメージだ。いわば、昔のデパートの大食堂のようなもので、親は大人用のメニューを、子どもはお子様メニューをそれぞれ選べるスペースだ。ショッピングセンターのフードコートで昼間から宴会を繰り広げている客は滅多に見ないだろう。
それに比べてフードホールは、お酒と一緒に楽しむメニューが揃う、大人向けの場のイメージ。当然、ショッピングセンター的なフードコートよりメニュー単価も高くなる。だから、タイムアウトマーケットをフードコートと捉えると、「単価が高すぎる」などの声が上がってしまうのではないか。
もう一つ、変わり種がグローサラントだ。グロッサリー(食品店)とレストランを組み合わせた造語で、スーパーやデパートで売られている食材を調理して、その場で食べられるスタイル。海鮮市場で、好きな刺身を選んでマイどんぶりを作る勝手丼も、それに近いかもしれない。
気に入れば客は食品を買ってくれて、売り上げに直結するので、グローサラントに乗り出すスーパーが増加する兆しがあったのだが、そのタイミングでコロナ禍が起き、次々イートインスペースが閉鎖されたため、それきり下火になった記憶があるが……。
ひと口に、「一定のスペースが確保されていて、お店にとらわれずに手軽に飲食できる」と言っても、目にする光景は異なるし、集まる人も変わる。とはいえ、それは店側が決めるというより、自然に客が選ぶのだろう。
安く手軽に飲める店が多すぎるゆえの不幸
合理的な思考をする若者世代には、タイムアウトマーケットのような業態は「平等で納得度が高い」と言ってもいいだろう。使いようによってはメリットも大きいはずだ。
ただし不運なのは、梅田近辺には気楽に飲める、安くて楽しい店が多すぎることだ。昭和の香り漂う新梅田食道街や阪急かっぱ横丁、名物イカ焼き片手にさくっと立ち飲みを楽しめる阪神梅田本店地下のスナックパーク、女性の1人飲みにもピッタリのルクア大阪のバルチカなど、筆者が愛する場所もこれだけある。いわば、大阪・梅田周辺が巨大なフードホールのようなものだ。人を集める酒と食のエネルギーが渦巻いているのだから。
一方で、スタイリッシュなビルが立ち並び、クールに整備された「うめきた」地区は、東京に住む者から見れば、普段から見慣れた風景でもある。悲しいかな、東京の繁華街は再開発の波に揉まれ、どの街に行ってもピカピカの高層ビルがそびえ、中は見覚えのある店名ばかり並ぶ商業ブースにオフィスフロア、隣はハイブランドのホテルやレジデンスと、人の体温を感じない風景へと変わっている。それが文化の進化形だというなら、大阪も早晩そのように変わっていくのかもしれない。
この先、タイムアウトマーケットを訪れる大阪の客が増えていくかは、梅田の街がどう変わっていくかと重なるのかもしれない。大阪人たちは、どちらの未来を選ぶのだろう。


※ログイン後、コメント入力が可能です。